東映動画の初となる短編アニメーション映画に『こねこのらくがき』という作品があります。本作は、アニメーションの神様と呼ばれた森康二さんがメインアニメーターとして参加し、丁寧な作画と可愛らしいキャラクターで動物擬人化アニメの原点となりました。
1957年に作られた作品で、まだアニメーションの製作体制が整っていない時代にもかかわらず、今観ても楽しむことができます。
現在NHKで放送されている連続テレビ小説『なつぞら』では、もう何度か番宣映像で森康二さん的な作画のネコが放送されていましたが、アニメーション編に突入したら、まずこの『こねこのらくがき』をモチーフにした作品が登場するんじゃないでしょうか。
『こねこのらくがき』は、日本初となるカラー長編アニメーション作品『白蛇伝』を作る前の手慣らし的な意味合いもありました。
史実と照らし合わせて、なつが東洋動画に入社するころに製作しているものと思われます。
ちなみに、なつのモデルの奥山玲子さんも1957年に東映動画に入社しているので、『こねこのらくがき』を製作していた時期と近いです。
そして、この『こねこのらくがき』で絵コンテと原画チーフを務めたのは森康二さんです。
森さんは、東映動画の前身となる日本動画社(日動)に入社し、数々の作品を手がけました。その後、日動は東映傘下に吸収合併され、東映動画となります。その処女作として、この『こねこのらくがき』が作られることになったのです。
この作品は、壁にラクガキをする猫と二匹のネズミの無邪気な追いかけっこを描いた小品ですけども、動物たちの繊細な芝居や、可愛らしい姿を描いていて、これこそ森康二さんの真骨頂であり、森さんが日動で培った作風や技術が開花したような作品となっています。
セリフなどは一切ない無声映画だからこそ、絵が動くという漫画映画としての面白さが伝わってきます。
まだ観たことのない人は、昔の作品だからと敬遠しないで、この機会にぜひご覧ください。絵がぬるぬる動いて面白いですよ。
ちなみに、『なつぞら』で森康二さんをモデルにしているのは、井浦新さんが演じる“仲 努”と思われます。
ぜひ、実在した人たちの仕事にも注目してみてくださいね。
もりやすじ画集 もりやすじさんが生前から企画していた画集。未発表の企画ボードが圧巻です。 |