『耳をすませば』の美術監督は黒田聡さんが担当しています。
現在では、数々の作品で重責を担っていますが、このときは初めての美術館監督となります。
ちなみに、作画監督もこのときが初めての高坂希太郎さんが務めています。
本作では、雫と聖司が高台で朝日ながめる印象的なラストシーンがありますよね。
このシーンを描くために、美術監督の黒田さんは、「実際に夜明けを見たい」と提案し、ロケハンが行なわれました。
多摩丘陵から都内を見下ろすことができる場所を探したところ、「よみうりランド」内にあるジャンプ台の鉄塔が選ばれました。
通常は立ち入り禁止のところ、映画のロケハンということで得別に許可が下りたそうです。
ロケハンに参加したのは黒田さんと、この場面を担当する男鹿和雄さん、そのほか6名のスタッフで行なわれました。
しかし、このロケハンのときに、黒田さんと男鹿さんは前夜から酒を飲んでおり、そのまま寝ないで現地に入ったといいます。
酒の入った寝不足の状態で、撮影された朝日。そのときのことを、黒田さんはこのように語っています。
黒田:
前の晩に僕は、なんというか、男鹿さんと一緒に朝まで飲んでて(爆笑)、カメラ持つ前に頭クラクラして、男鹿さんも酔ってて、てっぺんの細い所までスタコラ昇ってっちゃって。アブナイ、アブナイって(笑)。いや、あんまりいい話ないですね(笑)。太陽の昇る所は、あそこで見た朝日を使ってます。只、下界の海の感じは「高尾」っていう写真集を参考にしてます。
爽やかな映画とは裏腹に、制作者は酔っぱらった状態で観察していたというのも面白いエピソードですね。
ジブリの教科書9 耳をすませば 『耳をすませば』の魅力について、芥川賞作家・朝吹真理子さん、藤本由香里さんらが読み解く。 |