本日・11月17日より、ジブリ美術館の新企画展示「映画を塗る仕事」展がはじまりました。
今回の企画展示のテーマは「彩色」です。映画において色は、架空の世界にリアリティを持たせることと大きく関係しています。とりわけアニメーションの動く絵では、限られた色数の中でも彩色にさまざまな工夫を施すことで、キャラクターに生き生きとした実在感を与えるとともに、それぞれが抱く心情をも伝えることができます。
スタジオジブリのアニメーションの礎を築いた故・高畑勲監督や宮崎駿監督は、「登場人物とその日常を丁寧に描き、実写とは違ったリアリティをもたせることで、観客の心に訴えることができる作品」を目指してきました。本展では、彩色の面から両監督が表現してきたもの、そのこだわりに迫ります。
前日の11月16日には、メディアに向けた内覧会があり、館長の安西香月さんによる展示説明が行なわれました。
企画のきっかけは、安西さんが常設展示室のセル画を取り替えようと、久しぶりに保管箱を開けたことだったといいます。
安西さんは「最初に出てきたのはタタリ神でした。そして、それまでの展示より、手の込んだものが大量に出てきた。宮崎監督に昔はこれを1枚ずつ描かせてたんですか?と聞いてみると「そうだよ」って(笑)」と述懐。なお『もののけ姫』では、歴代最高となる580色のセル画用の絵具が使用されました。
展示では数々のジブリ作品の色彩設計を担当した保田道世さんの仕事を中心に、テーマごとに実例を用いてポイントを解説。「時刻によって変わる色」では、『となりのトトロ』に登場するネコバスの色が1日の時間帯でどのように変化しているのかを知ることができます。
安西さんは「ジブリの作品は時間の流れを細かく表現しています。ちょっとした色の違いで時間や情景を事細かに描き分けています」と語り、黄昏時、夕方、街灯が当たったときのネコバスの色彩を例に挙げました。
さらに「両監督(高畑勲と宮崎駿)は夜を表現するときに画面を暗くするのではなく、透明感を保つため色を変えて表現しているんです。その技術は綿々と受け継がれています」と語りました。
「映画を塗る仕事」展は、2019年11月まで開催予定となっています。
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