ジブリ旅で福岡の「どんぐり共和国」を巡礼したあとは、長崎に向かいました。
長崎とジブリはあまり結びつかないかもしれませんけど、ここにもちゃんとジブリ関連スポットがあります。というか、今年の7月にオープンしました。五島列島・福江島の「山本二三美術館」です。
今更説明するまでもないかもしれませんけども、山本二三さんはジブリ作品で数多くの背景美術を手掛けておりまして、ジブリ作品を語るうえで、二三さんは欠かせない重要人物です。
そんな二三さんの作品を集めた美術館が、二三さんの故郷・五島の福江島にオープンしました。
福江島には、長崎港からフェリーで行けます。片道2320円。わりと安いです。
実はこのとき、台風の影響があって、前日のフェリーは欠航していました。この日の運航も未定だったんですけど、なんとか福江島までは船が出ることが決まり一安心。福江島から先の便は、出なかったようです。
福江島に近づくにつれて、海と空の色が変わってきました。
二三さんは、この色を見て育ったんですね。「二三雲」の原点となる色を見ることができました。
福江島に到着して、まずホテルにチェックインしようと思ったんですけど、まだ時間が早いためか従業員さんが居らっしゃいません。ベルを鳴らしても鳴らしても出てこない。だもんで、さっそく「山本二三美術館」に向かうことにしました。
美術館のある武家屋敷通りがわからなかったので、どこにあるのか地元の人に尋ねると、「武家屋敷通りね。ここは、ボケ屋敷通りだよ。ハッハッハッ」と素晴らしいジョークをいただきました。
そんなジョークはさておいて、福江島の人はとても親切です。道を尋ねると、めちゃくちゃ丁寧に教えてくれます。親身度が都会とは違います。スケジュールありきの都会生活も考えものだなぁ、と一瞬だけ、否、何十秒か思いました。
「山本二三美術館」は、1863年に建てられた武家屋敷を約1億2千万円を投じリノベーションしてオープンされました。
1863年といいますと、まだ幕末です。薩長同盟も大政奉還もしていません。薩英戦争をしていたころの建物ということですね。歴史あるなぁ。
美術館の玄関には「呼板」というものがあって、これを木槌でコンコンと叩くと、スタッフの方が開けてくれます。
そのように説明書きもあるんですけど、遊びで置いてあるものと思ったので、コンコン叩いたらほんとうに中から開いたときは驚きました(笑)。昔の人はインターホンの代わりに、板を叩いていたわけですね。
内部はほとんど撮影禁止だったので撮れなかったんですけど、受け付けの部屋はかなり手が込んでいました。
天井が液晶パネルになっていて、二三さんの描いた雲が動いています。それが青空から夕焼けまで変化していきます。なにやら、天井に液晶を埋め込むのは、技術的に難しいらしく大変だったそうです。
こちらは、撮影可能スポットの二三さんのアトリエを再現した部屋です。雑多な小物まで細かく配置されています。デスク周りは、実際にこんな感じなんでしょうか。
部屋の襖は、『もののけ姫』の背景画になっていました。
二三さんが手掛けた作品が上映された部屋もあります。
壁は雲になっていて、床には島。ソファーは雲を表現しているんだと思います。
モニターには、二三さんが監督を務めた『天井大風』が映されていました。
他には、二三さんが手掛けたジブリ作品や細田作品の背景美術、それから五島列島の風景を描いた「五島百景」の絵画など、約80点ほど展示されています。
ちなみに、五島百景は、きっちり100点を目指しているそうですけど、まだまだ足りないのだとか。完成したあかつきには、また見に行かねば。
それから、『火垂るの墓』の絵の中に、節子が人形を抱えて横たわるイメージボードがありました。
二三さんが人物を描くのは珍しいので、目を引きますね。
『ニモ』のポスター画も展示されていないか期待していたんですけど、それは無かったです。残念。
あと、もう一つ、個人的に注目したのが『もののけ姫』の背景画。映画のラストカットになった、最後に一匹だけコダマが登場して、カタカタと首を鳴らすシーン。映画では、青空から下にスクロールしていって、倒木の上にコダマが登場します。あの背景画が展示されているんですけど、映画の背景として見るのと、一枚絵では印象がかなり違います。一目で青空が入ってくるせいか、破壊から再生するというメッセージを強く感じました。
ちなみに、この絵は「ジ・アート」にも入っていたんですけど、本で見ると小さすぎて、あまり強い印象はなかったです。やはり、絵は大きいサイズで観なければ。
美術館を出たら、お昼ご飯にちょうど良い時間だったので、すぐ近くにある「福江武家屋敷通りふるさと館」で、五島うどんを食べました。五島名物なり。うまし糧!