宮崎駿監督は、映画が完成すると満足感よりも、達成できなかった悔しさが残るそうです。未練の残ったシーンを思い返しながら、こぶしを握りしめて、半年間は頭がおかしくなりながら過ごすといいます。
それは『となりのトトロ』においても同様で、ほんとうは入れたいシーンがあったのだけれど、泣く泣くカットしたシーンがあるそうです。
宮崎監督が表現できずに諦めたシーンとは、どんなものだったのか。それは、書籍『ジブリの森とポニョの海』に掲載されたインタビューで語られています。
千里眼でメイを見つけるトトロ
宮崎:
『となりのトトロ』で入れられなかったシーンがあります。ラストの、メイを捜すサツキが困っているシーンで、トトロが千里眼でメイの居場所を見せるシーンを入れたかったんです。
サツキの視野がトトロの視野に乗って一気に広がって、メイを見つけるというシーンを入れたかったんです。でも、どういうふうにやったらいいのかわからない。たぶん、CGを使えるようになっていたら、違ったんでしょうけど。
やりたくて、やりたくて、やりたいんだけど、どうしても方法が見つからなくて、時間切れでやめたんです。それは『トトロ』の制作が終わってからも、ずうっと考えていますね。
果たして、やった方がよかったのかどうか、それも怪しいもんですけどね(笑)。
ジブリの森とポニョの海 宮崎駿と「崖の上のポニョ」 スタジオジブリの劇場公開作21本。そして「これまでのジブリ、これからのアニメーション」まで押井守が語り尽くす。 |