耳をすませば

近藤喜文監督作品『耳をすませば』の主題歌といえば、本名陽子さんが歌う「カントリーロード」です。本作において欠かすことができない、印象的な曲となっています。
この曲は、アメリカのシンガーソングライター、ジョン・デンバー氏が歌う「故郷に帰りたい(Country Roads)」を原曲としています。



本作で製作プロデューサーを務めた宮崎駿さんは、原曲の「カントリー・ロード」を繰り返し聴くうちに、「いったい、いまの中学生にとって故郷とは、なんだろう」と考え始めたところから、映画の企画も膨らんだと言います。

そして、作中で雫は、この「カントリー・ロード」の訳詞に取りかかり、翻訳された曲も物語の中で、何度か登場することになります。

主題歌として、作中に何度も登場する日本語訳の「カントリー・ロード」ですが、作詞家が考えて作られたものではありません。この曲は、当時まだ雫と同年代だった、鈴木敏夫プロデューサーの娘さんが作詞しています。

鈴木さんの娘にやらせよう

日本語訳は当初、宮崎駿さんがやることになっていましたが、どうしても書くことができません。
しかし、作中で雫がこの曲を歌うシーンは、事前に音声を収録するプレスコで行なわれることになっていました。スケジュールは、ギリギリに迫っています。

そこで、宮崎さんは思いついて、「鈴木さんの娘にやらせよう」と言い出します。鈴木さん自身も、少し悩んだそうですが、もうスケジュールも迫っているし、仕方がない。娘さんに、「やるか?」と尋ねると、「ギャラいくら?」と返され、さらには「締め切りはいつ?」と、プロのような応えが返ってきました。しかし、商談成立となります。

締切の当日、午前1時頃まで出かけていた鈴木さんの娘さん。帰ってきた娘さんをつかまえて、「今日が締切なんだぞ」と鈴木さんが言うと、娘さんは「わかってるよ、今からやるよ」と取りかかります。すると、たったの5分で書き上げてしまったそうです。

その娘さんが書いた詞を、宮崎さんは気に入ることになります。そして、宮崎さんは、その詩にすこしだけ手直しをするものの、作詞は鈴木麻実子さんとしてクレジットされ、主題歌に採用されることになりました。

このとき、宮崎さんが手を入れたことによって、近藤喜文監督とケンカになるわけですが、それはまた別のお話……。

『耳をすませば』サウンドトラック
『耳をすませば』のイメージアルバムをもとにオーケストラでレコーディングされたアルバム。主題歌「カントリー・ロード」も収録。

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