『紅の豚』には、プロデューサーである鈴木敏夫さんが提案したラストシーンがあります。
実現していないので、幻のラストシーンなのですが、それは作品のイメージとは若干離れたものでした。
2012年にニコ生で行なわれた、押井守×鈴木敏夫×川上量生の三者対談で語られました。
また、この中の対談で、押井守監督が『紅の豚』の主人公ポルコがなぜ豚の格好をしているのか、その理由を解説しています。
ポルコは最後、奥さんのとこに帰る
押井:
『紅の豚』のときは、敏ちゃんの名言だと思ったけど、「あの豚って、最後どこに帰るの?」って言ったら、「決まってんじゃないですか。奥さんのとこ帰るんですよ!」って。そりゃそのとおりだって。
鈴木:
いや……。
押井:
そう言ったじゃん!(笑)
鈴木:
言ったんだけど、ちょっと宮さんのこと怒らせちゃったのよ(笑)。
押井:
あの豚って、つまり宮さんのことでしょ。あの豚のお面を、パッと取ると宮さんの顔になってるわけじゃん。絶対そうだよ。
鈴木:
ちょっと、そのときのことを言うと、こちらも気を許しちゃってね。最後、帰ってくるでしょう、自分のアジトへ。そこから通過して、奥へトントントンって行くと、そこに本宅があって。で、家の中に入ろうとすると、いきなり怒られて、「ゴミを捨ててこい!」って言われる。それで終わらせたらどうですかね、って言ったら、宮さん笑ってなかったのよ(笑)。
押井:
あの人、まだあのときは格好つけてたから。格好つけて、トレンチコート着て、だけど顔は豚なんだよね。なぜ豚なんだろうって。羞恥心があるから。キザにふるまうためには、自分の素顔じゃ恥ずかしいんだよ。だから豚のお面をつけた。
だって、あの豚だけじゃない。あとは全部人間じゃない。あの世界どうなってんのって。「呪いをかけられた」とか言ってるけど、呪いをかけられたんじゃないんだよ、あれは自意識のことを言ってんだよ。でも、敏ちゃんさすがに分かってると思ったのは、そういう自分のどこか後ろ暗さを持ってるんだよね。
川上:
いやでも、ほんとにジブリに来て思ったんですけど、作品の裏の話とか、知らなくても良い話多いなって思いましたよね。もう、聞きたくないもん、こんな話(笑)。
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