『となりのトトロ』公開30周年記念ということで、宮崎駿監督が語った本作の制作裏話をご紹介します。
宮崎監督は、どのような想いをもって『となりのトトロ』を作ったのか、トトロのキャラクターを作るにあたり考えていたことなどを語っています。2014年のインタビューです。
日本の自然に対する感謝と愛情を表現したかった
宮崎:
『トトロ』を作りたいというよりも、自分が今まで無視してきた、日本の自然に対する感謝と愛情を表現したいと思ったんです。
そういう映画を作りたいと思ったのが出発点だったんです。あのバス停で、お父さんが帰ってくるのを待ってると、横に不思議なものがやって来る。そういうシーンの断片と、小さな女の子が庭に立っていると、半透明の変なものが通っていく。その二つのイメージだけがあって、そのまま10年以上、自分のスケッチブックの中に眠っていたんです。
そのバス停で待っている子は、大きいんですよね。だって、そんな小さな子が、迎えに行くはずがない。でも、目の前をトトロが通っていく子は、小さい子じゃなきゃいけない。で、二人出てきて、どうしようって。あとで考えたら、姉妹にすれば良いんだって、突然解決がついたんですけど、「どうしよう」のまま本当に長い間ほったらかしになってました。
その10年間の間にずいぶん自分の家の周りを歩いたり、ほかのところに行ったときも風景を気をつけて見るようになりました。それで、これはひょっとしたら、映画に使えるんではないかとか。そういうことで、ずいぶんいろいろ貯めましたから、なかなか企画が通らなかったんですが、企画がなかなか通らなくて良かったんだと思いますね。
キャラクターに関しては、見たことのないものですから、適当に描いて(笑)。ただ、賢いんだか、馬鹿なんだかわからない、大きなもので、いるんだか、いないんだかわからない、そういうものを作りたいと思ったんです。
スタッフが描くときに、ものを見ている眼を描くなって。どこか遠くを見ているのか、見ていないのか、そういう眼を描くようにって、いつも言ってました。