思い出のマーニー

『思い出のマーニー』は、スタジオジブリ作品としては初のダブルヒロインで描かれた物語です。
その二人のヒロインのうち、マーニーを米林宏昌監督が、杏奈を作画監督の安藤雅司さんが主に描きました。鈴木敏夫さんは、このヒロインを描き分けたことが、この映画の見どころのひとつと語っています。



米林監督と安藤さんの描き方の違いを知ったうえで、『思い出のマーニー』を鑑賞すると、また違った観方できて面白そうですね。

対談の内容は、『マーニー』公開時におこなわれた、ジブリ汗まみれの公開収録「思い出のマーニー×種田陽平展」の文字起こしです。

 

平面的に描く米林宏昌と、立体的に描く安藤雅司

鈴木:
見どころのひとつで……ほんとうは見どころは全部だって、いつもは言うんですけど。ちょっと今回、ひつとだけ面白い話をすると、米林監督は人物を描くとき平面的に描くんですよ。これって、実は日本の伝統。漫画もそうだし、宮崎駿も実はそういう描き方。ところが、作画監督の安藤は、人物を立体で捉えるんですよ。立体で描くんですよ。
そうすると面白いのは、杏奈とマーニーって二人のキャラクターがいるでしょう、マーニーを描いたのは米林。それで、杏奈を描いたのは、安藤なんですよ。そうすると、平面的なキャラクターと、立体的なキャラクターが、どうやって二人で芝居をするか。そこを見ていくと、けっこう面白いんですよ。
だから、ぼくなんか、ほんとうのこと言うと、どうなっちゃうんだろうと思ってたけど、これが収まるところに収まってるから面白かったんです。
というのは、ちょっと説明しなきゃいけないのは、アメリカのアニメーションって全部人形を作っちゃうんですよ。それで立体で描く。それを写生して描くから。そういうことで言うと、西洋は伝統的に立体だし、日本は漫画がそうであるように平面的なんですよ。そこらへんは、ひとつの見どころだと思います。

思い出のマーニー

種田:
今の話でわかりましたけど、安藤さんも平面的に描いてるんだけども、線が立体的なんですよね。強弱があったね。やっぱり、米林さんの描き方のほうが平面的に見えますね。同じように描いていても。

鈴木:
これは見ていくと、ほんとうに面白いの。だから、どのキャラクターを誰が描いているか。
ついでだから言っちゃいますと、宮崎アニメと高畑アニメってあるでしょう。宮さんのキャラクターって、全部平面なんですよ。ところが、高畑さんのほうって、全部立体的なんですよ。その統一感がある。それは面白いですよね。