ルパン三世 カリオストロの城

本日は、宮崎駿監督の長編アニメーション初監督となった『ルパン三世 カリオストロの城』が放送されます。ということで、カリオストロの城の豆知識をまとめてみました。
本作は、予算も時間も少なくて、たった4ヶ月で作ってしまったことが有名ですね。そのことについて、宮崎監督は妥協も多くダメージになったことを語っています。



劇場公開時のキャッチコピーは3点

「前作をしのげないのなら 2作目を作る意味がない。宮崎駿」
「巨大な城が動き始める! 影の軍団が襲ってくる!」
「生きては還れぬ謎の古城でついにめぐり逢った最強の敵!」

当初は、大塚康生に監督の依頼がきたが、気乗りしない大塚は宮崎駿に監督就任を要請した。

宮崎駿 大塚康生

当時の宮崎は日本アニメーションで高畑勲らと『赤毛のアン』のレイアウトや場面設定を担当していたが、これを降板して1979年5月に制作準備に取りかかる。後の作品と同様、宮崎は脚本なしでイメージボードと絵コンテを描き始め、脚本は共同名義の山崎晴哉が手直しする形となった。のち山崎により集英社コバルト文庫からノベライズされている。

『ルパン三世カリオストロの城』コバルトシリーズ

『カリオストロの城』は宮崎駿監督が小学生のときに思いついた話

宮崎駿

宮崎:
『カリオストロの城』は小学生ぐらいのときからやりたかったことなんですよ。それをやってみたわけです。やってみて、かなりいいところまでいけた。たとえるならば、地平線の彼方にゴールの金色のモスクが見えるところまではたどり着いた。ところが、そこから撤退せざるを得なかったんです。最後の最後に、妥協をしなきゃいけなくなりました。もうちょっと時間があれば……要するに、作品の締め切りに間に合わせなければいけなかったわけですね。
それが僕にとって、ダメージになりましたね。しばらく地面を這い回るような気分になったんです。

ジブリの森とポニョの海 宮崎駿と「崖の上のポニョ」

原作者モンキー・パンチの評価

モンキー・パンチ

原作者のモンキー・パンチは、「日本国外のルパン三世ファンの95%は「ファンになったきっかけ」として本作を挙げる」と述べながらも、2007年7月「ルパン三世シークレットナイト(新文芸坐)にて「(試写会で見た後の取材で)『これは僕のルパンじゃない』って言ったんですね。『僕には描けない、優しさに包まれた、宮崎くんの作品としてとてもいい作品だ』って。でもこの後半の部分が削られて、最初の一言だけが大きく取り上げられちゃいましてね(苦笑)。僕のルパンは毒って言うか、目的のためなら手段を選ばないところとか、欲望とか人間の汚いところとか持ったキャラクターですからね。あんなに優しくは描けないなぁ」と、原作と映画の違いも述べている。

銭形のキャラクターに関しては「銭形は凄腕の刑事である」というのが原作の設定かつ作者のイメージであるため、アニメにおいてドジ刑事扱いされることには不満を述べており、本作については、「銭形警部は宮崎さんの解釈が一番正しい」と語った。

湖中の遺跡は、モーリス・ルブラン 著『緑の目の令嬢』に出てくる湖とローマ遺跡がモチーフ

ルパン三世カリオストロの城 湖中の遺跡

緑の目の令嬢 アルセーヌ・ルパン全集

時計塔と地下室は、黒岩涙香・江戸川乱歩 著『幽霊塔』の時計塔や地下室がモチーフ

ルパン三世カリオストロの城 時計台

ルパンとカリオストロ伯爵の対決の場となった時計塔は涙香・乱歩の『幽霊塔』をモチーフにしている。

幽霊塔 (江戸川乱歩文庫)

宮崎駿と、ルパン役・山田康雄

山田康雄 宮崎駿

宮崎駿監督は、アフレコの際にルパンを演じている山田康雄に、おちゃらけたセリフを控え、クリント・イーストウッドを吹き替える時のような抑えた声での演技をするよう指示したが、自身でキャラクターを確立していた山田は「今さらごちゃごちゃ言われたくねーよ、ルパンは俺が決めてるンだ」と横柄な態度で吐き捨てたといい、宮崎監督は厳しい表情で耐えたという。これを目にした作画監督の大塚康生は「生意気だ、降ろしてしまえ」と宮崎監督に耳打ちしている。しかし、試写を見終わった山田はそのレベルの高さに態度が一変。「先ほどは大変失礼なこと言いまして申しわけございません。どんなことでもおっしゃってください、何百回でもやり直します」と宮崎に頭を下げたという。
ただし、山田の近くに位置していた次元大介役の小林清志は「そんな記憶はない」と話している。

作画汗まみれ

18世紀に詐欺師の、自称・カリオストロ伯爵が実在

カリオストロ伯爵

医師、錬金術師、オカルト専門家、など様々な肩書きを持つが、ほぼ詐欺師と言って良く、こういう人々は18世紀にヨーロッパでは多く見られた。上流階級のなかに紛れ込み、低い身分から機会を見てのし上がろうとし、アヴァンチェリエ(山師)と呼ばれていた。
本作のキャラクターのモチーフとなっているかどうかは定かではない。

企画書は、たった一行「一夜の惨劇」

2011年放送の日本テレビ「心ゆさぶれ!先輩ROCK YOU」に鈴木敏夫プロデューサーが出演した際に、『ルパン三世 カリオストロの城』の企画書がたった一行「一夜の惨劇」であったことを語っている。
『心ゆさぶれ!先輩ROCK YOU』

『カリオストロの城』は、ヒッチコックの方法論で作られた

ルパン三世カリオストロの城

宮崎:
ラストはこれで終わるという、ヒッチコックの方法論を採った時期もあります。若い時分はそうでした。
『ルパン三世 カリオストロの城』がそうでした。ラストのシーンに向かって、ストーリーの構成を組み、シーンを綿密に組み立てていく。まず、ここにお城があって、ここに湖がある、と舞台をつくっておいて、ひとつの場所は必ず2回出す。その場合は、こっちから見て、こっちから見て……とカメラの角度を変えながら出す。そうやって自分なりのルールを決めて構成をつくっていくんです。それは一種の頭の遊びですからね、おもしろかったですね。おもしろかったんですが、何度も続けようとは思いません。この方法を続けると、仕事に頽廃が生まれると感じました。それで、僕は『カリオストロの城』で終わり。

ジブリの森とポニョの海 宮崎駿と「崖の上のポニョ」

『カリオストロの城』のルパンは、生き恥をさらして生きる男

原作のシニカルな「ルパン三世」から、陽気なキャラクターに変更したのは、そのときの時代に合わせるため。

宮崎:
ルパンの劇場物をやらないかといわれた時、なんで今さらって僕は思ったんですよね。率直にいって。つまり僕の想いとしては、ルパンっていうのは六十年代から七十年代にかけて生きてたキャラクターでね。今さら出てくるには古すぎるって思ってましたから。

自分なりのルパン像を作らなければならない羽目になった時、六十年代末から七十年代頭に一番生き生きしていた男が、今、生き恥をさらして生きているという風に構えるしか手がなかったんです。

『カリオストロの城』を作るにあたり、宮崎駿が考えた「ルパン」のキャラクター像

ルパンのセリフ「お友達になりたいわぁ!」の元ネタ

物語終盤に、ゴート札の原盤を持っている不二子を見て、ルパンが言う「わぁ! お友達になりたいわぁ!」というセリフは、当時放送されていた「金鳥サッサ」のテレビCMで、園佳也子が言うフレーズが元ネタとなっている。

「金鳥サッサ」テレビCM