鈴木敏夫YOMIURI ONLINEの「おとなの煙談」に鈴木敏夫プロデューサーのインタビューが掲載されています。
各界で活躍する、魅力ある“おとな”を対象に人生の楽しみ方やライフスタイルを語ってもらう連載シリーズ。第1回に鈴木さんの登場です。
製作現場から退いて、初めて実感したことなどを語りました。



仕事とは「糧を得るための手立て」

僕にとって仕事とは「糧を得るための手立て」。それ以上のものだと考えてはいけない、面白さや魅力は関係ない──これは自分の中で、一つの戒めにもなっています。とは言え仕事には人生のかなりの時間を割くわけですから、どうせなら少しでも楽しくできた方がいい。部下にも、ずっと昔からそう言ってきました。

こうした考え方に加えてもう一つ大切にしているのは、人に迷惑をかけないことです。映画製作で言えば、金銭面でスポンサーに損をさせないこと。そのためには、良い作品、お客さんが来てくれる作品を作っていかなければなりません。

(略)

僕は今春、映画製作の現場から退きました。ジブリの最新作『思い出のマーニー』ではプロデューサーではなくGM(ゼネラルマネジャー)として、原作の選定や予算の決定などにだけ携わっています。引退も考えなくはなかったですが、野球の落合博満さんが昨年、監督ではなくGMとしてチームに復帰したでしょう。「あ、それいいな」と思って真似させてもらいました。

それで、「これからは手も出さない口も出さない」と言って若い人たちに任せたんですが、やっぱり気になって気になって。「俺だったらこう宣伝するのに」とか、つい考えてしまうんです。

「手も出さない口も出さない」なんて格好つけるもんじゃないですね(笑)。編集者時代に、「お前に任せる」と言ったきり完成まで全くチェックしなかった上司がいましたが、僕はあの人の足もとにも及ばない。この作品で、人に任せるにはそれだけの度量が必要だということを痛感しました。