例によって、本日の金曜ロードショーに合わせて、『おもひでぽろぽろ』関連情報をすこしだけ集めてみました。
高畑勲監督は、なぜ『おもひでぽろぽろ』を映画化しようと思ったのか。また、映画化にあたり拘ったことは何だったのか、など。映画鑑賞を楽しむために役立てば幸いです。



原作漫画『おもひでぽろぽろ』の魅力とは

高畑勲監督が、なぜ、『おもひでぽろぽろ』を映画化しようと思ったのか、岡本蛍さん原作の漫画『おもひでぽろぽろ』の魅力について語っています。

高畑:
「おもひでぽろぽろ」は、あきらかに魅力的な漫画である。
なぜか。
第一に、思い出の切り取り方のあざやかさである。
人は自分にとって大事件だけを記録し、他は忘れ去っています。また、記憶の中では、事件にいたるまでのプロセスさえもが、事件によってもたらされた結果やその時の感情によって影響を受け、しばしばゆがんだ形で脳裏に定着する。さらに大人になってからの感慨や意味づけによってもゆがむ。むしろそのゆがんだものを、人は「思い出」と呼ぶのだと言っても良いだろう。思い出はしたがって、たとえほろ苦いものであっても、しばしばおぼろでなつかしいものになりがちである。
ところが、漫画「おもひでぽろぽろ」には、十歳の少女のありのままの現実と感じ方が、じつにありありとすくいとられている。人はまるでタイムマシンで連れ戻されたように、――つい昨日のことのように、十歳の頃の自分のいた世界に連れ戻される。そして人は、出来事の内容によってではなく、そのまざまざと立ち現われた世界感覚に心をゆさぶられるのである。

(略)

遠ざかった過去を感傷にくもった眼でふりかえった時見えてくるもの、それがいわゆる「思い出」であるとするならば、この「おもいひでぽろぽろ」は、タイムマシンに乗って思い出の発生現場を本人がいわば「ルポルタージュ」してきたもの、とでもいえばよいだろうか。
漫画「おもひでぽろぽろ」の第一の魅力はここにある。

映画を作りながら考えたことⅡ 1991~1999
「おもひでぽろぽろ」から「ホーホケキョとなりの山田くん」まで、アニメーション映画監督・高畑勲の企画書、エッセイ、インタビュー、講演、対談など37本を収録。

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キャラクターは声優がモデル

タエ子とトシオのキャラクターは、声優を務めた今井美樹さんと柳場敏郎さんがモデルとなっている。しかし、元々はキャスティングが先行でモデルとなったわけではなく、先に二人がキャラクター設計の参考に採用された。モデルとなった理由は、高畑勲監督の要望。実際の人間を感じさせるキャラクターを作るため、風貌のほか、骨格や、笑顔の筋肉の動きなどが参考にされている。

映画『おもひでぽろぽろ』のリアリティあるキャラクターについて

 

高畑勲監督は独自に紅花の作り方を開発している

『おもひでぽろぽろ』で高畑勲監督は、紅花の作り方を徹底的に調べ、日本中の紅花づくりの本を読破。独自に作り方を開発をしてしまった。

『おもひでぽろぽろ』で徹底的に調べられた紅花作りの描写