押井守「日刊サイゾー」に押井守監督のインタビューが掲載されています。
テーマは、アニメーションと写真の関係について語ったもの。その中で、スタジオジブリと庵野秀明監督についても言及しています。押井監督は、自身を画角でアニメを作ると踏まえたうえで、庵野監督も同じタイプとのこと。作画や動画のリズムを重視するジブリの後継者ではないと指摘しました。



ジブリは綿密な描写で流れるようなアニメーション
庵野は画角で作っている

――ロケハンで撮影する写真には、何を要求するんですか?

押井:
原則的にモノクロで撮る。カラー写真は一切撮らない。なぜかといえば色のイメージに惑わされるから。大切なのはどういう角度から街を眺めるのか。水路から見上げた風景であったり、高い所から見下ろした俯瞰であったり、あるいは廃屋を探して撮ってもらったり。そうやって撮りためた写真の中から映画のイメージの原型になりそうな写真を自分で選んで、アニメーターに参考資料として配る。それはレンズを意識したレイアウトが欲しいから。

――レンズを意識したレイアウトというのは、具体的にはどういうものなんでしょう?

押井:
アニメの場合、作画や動画のリズムをメインに考えると、一番見やすい視線のポジションは自動的に決まってくる。どうなるかといえば、アイレベル(人が立った状態での目の高さ)になる。それが一番描きやすいし、俯瞰にするとキャラクターの情報量が極端に減るから、絵描きはやりたがらない。だから昔のアニメーターが好んで取る構図はほとんどアイレベルで、これは宮さん(宮崎駿監督)といえども例外じゃない。結果的に映画ではなく、絵本アニメにならざるを得ない。『パト2』では、そこから一歩踏み込んで、レンズの味が欲しかった。要するにディストーション(光学的な歪み)のあるレイアウト。それがあることで、アニメの画面であるにもかかわらず、レンズで撮影したような臨場感が立ち上がる。

(略)

――いまアニメを作るとしても、同じ方法論で作りますか?

押井:
僕は動画の専門家じゃないから、アニメの場合はそうやって画角から入るしかない。今さらジブリみたいな緻密な描写で流れるようなアニメを作れますかっていわれても、そういう能力はもともと持っていない。だから余計なことを言っちゃえば、庵野(秀明)がジブリの後継者になるかといったら、あいつも実は画角で作ってる男なんだよ。あいつは過去に見た映画のレイアウトは全部覚えているって特殊な才能を持っていて、それを紙の上に再現する能力も持ってる。それだけは大したもんなんだよ。その代わり、全部何かのコピーだよ。東宝の特撮映画だったりのレイアウトが頭の中に大量にためこまれていて、必要に応じて即座に取り出せる。

――庵野氏は、世間的には動画寄りの監督に見られていますが、押井さんの評価は違うんですね。

押井:
俺は、アニメーターとしての庵野なんて評価してないもの。でも、あいつのレイアウト能力はたいしたものだと思ってる。あと彼は、情報量の操作ってことを知ってる。どこの情報量を増やして、どこを省略するか。アニメって、それでしか演出できないから。

押井守ぴあ
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