おもひでぽろぽろ高畑勲監督といえば、徹底的に調べつくしてディテールに拘ることで有名ですね。
『おもひでぽろぽろ』でも、紅花作りのシーンを作るにあたり、現地に赴き取材を重ねたそうですが、それだけでは飽き足らず、日本中の紅花作りに関する本を読破したといいます。



高畑監督は独自に、ほんとうの紅花の作り方を開発してしまい、専門家も唸るような紅花の知識を身に着けていたそうです。

『鈴木敏夫のジブリ汗まみれ』で語られた高畑勲談義を、一部文字起こししました。興味の対象すべてにおいて、専門家のような知識を身に着けてしまう、高畑勲監督の研究者ぶりが語られています。

紅花作りを発明した高畑勲

おもひでぽろぽろ

鈴木:
『おもひでぽろぽろ』を作ったときはね、紅花作りっていうのを映画のテーマにしようと。そしたらね、ぼくと二人で現地に行くんですよ。山形の市役所行ってね、「紅花作ってる人、紹介してくれないか」と。それで、三軒ぐらい回って、紅花を作る――作りかた全部教えてもらったんですよ。それで、東京へ帰ってきて。そしたら、「紅花に関する、日本の本を全部集めてください」って言うから、しょうがないから集めるわけよ。で、それを読破していくんだけどね。

ぼくは、そんなことより、ほんとはシナリオ書いてほしいなと思ってるんだけど(笑)。まあ、しょうがない。これは通過儀礼だ、と。
で、読んだあと、自分でシナリオ書く一方、大学ノートを一冊書いてるんですよ。それで、なにかっていったら、「紅花の作り方」ってタイトルを書いて、ほんとうの紅花はこうやって作った方が良いっていう、考え方を自分で発明するわけよ。

それで、「あの三人に聞いたことは間違いだ」って言い出すんですよ。それで、米沢に鈴木さんっていう人がいて、「僕が思うに、この人なら僕の考えを理解してくれるはずだ」と。それで、シナリオ作ってる途中で、この人に会いに行きたいっていうから、ちょっと待ってくれと。そんなことやってたら、時間がなくなるので。
しょうがないから、スタッフのひとりに、そのノートを鈴木さんのところに持って行かせて。で、読ませると、「これはいったい誰がお書きになったんですか? これは正しいです」とか言われてね、それで本人は満足するとかね。そういう人なの。

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