スター・ウォーズ

『スター・ウォーズ』の新作が公開されて、話題になっていますね。
同作は、第一作目が1977年に作られました。
それまで、マニア向けの映画と認識されていたSF作品を、大衆受けするエンターテインメントに評価を一変させた作品とされています。



鈴木敏夫さんの講演会「日本から世界に広がるアニメ」で、ジョージ・ルーカス、スティーブン・スピルバーグの影響について語っています。

子ども騙しの企画を丁寧に作れば、大人も観てくれる。

『スター・ウォーズ』は公開されて間もなく社会現象となり、映画のあり方を変えました。その波は、ジブリにも影響を及ぼすことになります。

――全体的な方向とか、流れとか、アニメーションにおいて期待されることはありますか?

鈴木:
その件に関しては、アニメーションだろうが、ライブアクションだろうが、あまり関係ない気がしてるんですよね。
要するに、世界のある動きを決めるのは、やっぱり一本の作品だと思うんですよ。
誰が、どういうものを作るか。それによって、全体の流れが大きく変わる。っていうことで言うと、今ふり返ってみると、スピルバーグ、ルーカスは、なんだかんだで凄かったなと思うんですよ。
スピルバーグにしろ、ルーカスにしろ、ああいう題材って、アメリカ人が得意な題材だったでしょ。『スター・ウォーズ』にしろ、『インディージョーンズ』にしろ。だけれど、昔のそういうものって、子ども向けだから、監督もいい加減に作ってましたよね。お金もかけない、期間もかけない。チャチなものでしたよね。
ところが、そういうものを観て育った、ルーカスとスピルバーグは、子ども騙しの企画を、きちんとお金と時間をかけて作ったら、大人も観てくれるってことをやった人でしょう。それは、世界の映画の潮流に、影響を与えたと思うんですよ。

今は新しい映画を待望している時期

また同じく、子ども向けの作品に時間と予算をかけて、大人の鑑賞に堪えうる映画づくりをしていたのがスタジオジブリです。ルーカスとスピルバーグが、この流れを作っていたからこそ、ジブリがここまで世の中に浸透した、という見方もできますね。

しかし、40年近く続いたその流れも、変わりつつあります。

宮崎駿監督は、短編アニメーション『毛虫のボロ』で、世界を変えるために奮闘中のようです。大きなうねりの中で、ひとつの流れを作ることができるでしょうか。

鈴木:
そういうことで言うと、やっぱりスピルバーグがいなかったら、ジブリはあったんだろうか? って、この歳になると、そういうことを考えるようになりましたよね。
スピルバーグとルーカスの作ったこの路線を、世界のいろんなところで、ウン十年みんながやってきたわけですよ。だけれど、そろそろそこに終止符が打たれ、今新しい映画を待望している時期じゃないかって気がしてるんです。それを、いったい誰が作るのか。

実は、宮崎駿は、たった10分ですけど、それをやろうとしてますよね。「これが、新しい映画だ」って。ぼくは、それに感心しています。74歳になっても、創作意欲が衰えない。
それで、3Dでやるっていうのも、彼は自分を奮い立たせるためですよ。そういう意味では、やっぱり凄いなと思います。
一本の作品に、まさに命をかけるわけでしょ。そしたら、途中で死んじゃってもかまわないと思ってるんですよね。