シン・ゴジラ庵野秀明監督が、『シン・ゴジラ』を作ることになった経緯は、ジブリの鈴木敏夫さんが、東宝の市川プロデューサーに庵野監督を紹介したことから始まったといいます。
2013年のあるとき、鈴木さんは庵野さんを引き連れ、東宝の方々と食事会をしたそうです。



その日の帰り、東宝の市川さんは庵野監督を送りながら「ゴジラって興味あります?」と訊ねます。庵野監督は「まあ、興味ないでもないですね」と答えたことから脈を感じて、しばらくして二人で会って、話が進行していきました。

従来の工法どおりに、プロデューサーがプロットや脚本を作り、監督や特技監督選んで作っていくと、これまでの延長戦の「ゴジラ」しかできないと感じていた市川さんは、誰かひとりのクリエイターに頼んで作ることを望んでいたといいます。

当初、庵野監督はプロットだけになる可能性もあったそうですが、プロジェクトが進行するにつれて、脚本も書くことになり、現場も総監督を務めることになります。庵野監督は、脚本を大人向けにする、と言ったことから、東宝側も腹をくくったといいます。

恋愛や、どたばたバトルを排除した、ストイックな作品

シン・ゴジラ

庵野監督は、一作目のゴジラに極めて近いものを作りたいと考えており、主人公は政治家にすることを伝えます。

東宝側は、恋人がいたほうがいいと考え、長谷川博己さんと石原さとみさんを元恋人にすることを提案します。
しかし、庵野監督は、そういった提案をどんどん排除していき、登場人物のバックボーンを描かない脚本を書いて、ストイックな政治家の話が作られました。

脚本の細部にもこだわっていて、政治家や官僚にも取材し、防衛大臣の経験がある小池百合子さんにも取材をしたといいます。

首相官邸や危機管理センターにも行って取材をしたそうですが、写真撮影ができないことから、スタッフが持っていたカバンで寸法を測って、セットに再現したのだとか。

『シン・ゴジラ』の役者は通常の1.5倍の速度で喋ている

シン・ゴジラ

出来上がった脚本は、普通で考えれば3時間分になっていました。
しかし、それでは長すぎるので、市川プロデューサーは「2時間に収めてください」と言うと、庵野監督は「わかりました、撮れますよ。早口で喋らせるから」と答えたそうです。

通常の映画・ドラマと比較して、『シン・ゴジラ』の登場人物は、1.5倍くらいの速度で喋っていたことから、2時間以内に収めることができました。

庵野監督は、岡本喜八監督の『日本のいちばん長い日』が大好きだそうで、その手法も取り入れたそうです。ものすごく細かいカット割りで、ものすごい情報量。凝縮する実写映画にしたかったのでしょう。

シン・ゴジラ

撮影に対するこだわりも、そうとう強かったそうです。画面をミリ単位で指定したり、複数のカメラで撮影し、もの凄い早口を役者に要求するなど、アニメーションを作る感覚と同じように、すべて自分でコントロールする作り方だったといいます。実写で、宮崎駿監督のようなこだわりを発揮していたのかもしれません。

CGの仕上げも、半年間大勢で作業して、庵野監督がいつOKを出すのかわからない状況で、みんなやきもきしていたそうです。

蒲田くんに対する抵抗を説得した庵野秀明

シン・ゴジラ

ゴジラがいちばん最初に姿を現す、いわゆる第二形態の通称「蒲田くん」については、東宝側としては若干の抵抗があったそうです。歴史ある東宝の看板スターであるゴジラが、あんな不気味な形で登場するんですから無理もありません。
しかし、これくらいのことをやらないと、これまでのゴジラと変わらないという思いもあったといいます。

庵野監督は、「あんなにでかいのに、二本足で立ってるのは生命体としておかしい」と言い、「完全生命体だから自分で進化して、その過程で直立しているんだ」という設定を提案して説得したといいます。

東宝の社内も、世代が変わっていたことから、それに対する異論はほとんど出なかったそうです。過去のゴジラ作品の呪縛が解ける時がやってきました。

『シン・ゴジラ』の宣伝について

シン・ゴジラ

宣伝においても、これまでのゴジラとは、まったく違う戦略が敷かれました。
これまでのゴジラ映画は、宣伝の段階を経て、公開まで全部見せていくものでした。

しかし、『シン・ゴジラ』の予告編では、あまりゴジラも登場せず、面白さが伝わりにくい作りになっています。庵野監督は、自ら情報量を抑えた予告編を作りました。きっと、公開前に期待していた人は、そう多くはなかったはずです。

ところが、公開初日の朝になると、映画を観た人たちがSNSで大騒ぎをして、口コミによってまたたく間に『シン・ゴジラ』は広まっていきます。

庵野監督は、『エンヴァンゲリオン』においても何も見せず、試写会もやらなかったと言います。それでこれまで成功していたわけです。自信もあったのでしょう。

結果的に、『シン・ゴジラ』は興行収入82.5億の大ヒットとなり、新しいゴジラを創ることに成功したのです。

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