「メッセナゴヤ2015」鈴木敏夫講演会「ジブリの大博覧会」に行った翌日。11月7日に「メッセナゴヤ 2015」にて開催された、講演会「鈴木敏夫の引き出す力 ジブリを支えた「男」の哲学」に行ってきました。
同イベントは、今年で10周年となる日本最大級の異業種交流展示会。愛知万博の理念となる、環境、科学技術、国際交流を継承する事業として2006年にスタートしました。



鈴木敏夫の引き出す力
~ジブリを支えた「男」の哲学~

メッセナゴヤ2015

鈴木敏夫さんの講演会は、同イベントの10周年を記念して行なわれたビジネスセミナー。おそらく、ビジネスに関することをお話していただく、ということを前提にお招きしているのだと思います。が、いつもどおりの作務衣姿で登場した鈴木さんは「これってビジネスセミナーなんですね、さっき知りました」と一言。鈴木さんのペースで始まった講演会は、子ども時代の話から始まり、中日ドラゴンズの試合で行なった始球式、スタジオジブリの経営についてなどなど、幅広く語られました。

鈴木敏夫の始球式

名古屋出身ということで、司会の方から郷土愛を訊ねられ、「中日スポーツは、創刊してから今日まで毎日読んでいる」という鈴木さん。ドラゴンズ愛があります。

始球式については、これまで何度もオファーはあったものの、断り続けてきたそうです。
しかし、今回は、愛知で「ジブリの大博覧会」を開催していたため、宣伝も兼ねて引き受けたのだとか。
球団社長からは、始球式の練習をすると本番でろくなことにならない、と言われていたそうで、鈴木さんも練習をする気は無かったそうです。

ところが、本番直前に権藤博さんが控室にやってきて、いきなり「練習しよう」とブルペンに連れていかれたのだとか。「練習では非常に上手くいっていた」という鈴木さん。これなら上手くいくと思った鈴木さんですが、マウンドにあがって、高低差があることに驚いたそうです。その高さは40センチ。平らなブルペンとは大違い。「左足をあそこに出したら転ぶから……」と、慎重にフォームを確認しながら投げたら、あの投球になってしまったのだとか。

マウンドのことを教えといてくれれば、と悔しがる鈴木さんでした。

スタジオジブリは会議をしない

鈴木さんが徳間書店に勤めていたころ、一か月に27個の会議があったといいます。出版社なので、雑誌と書籍のふたつがあります。そうすると、雑誌だけで「企画会議、宣伝会議、販売会議」となります。書籍でも同じことになるので、これで6つの会議になってしまう。さらに、「部長会」「拡大幹部会」があり、途中から映像分野にも進出したことによって、会議がどんどん増えていって、27個の会議になってしまったのだとか。

最初のうちこそ出席していた鈴木さんですが、あるとき会議に出るのをやめること決意して、一切参加しなくなります。すると、そのことが社内で問題となってしまいました。

昔は、こんなに会議が多くなかったのに、なぜこうなってしまったのか? 鈴木さんは考えたそうです。

その結論というのが、社長や専務も昔は若かったため、自分が歩き回って現場に報告をしていた。しかし、歩かなくなったことによって、会議が増えていく。これが、会議の本質といいます。
そして、鈴木さんは、ジブリを設立するにあたり、「会議をしない」ということを最初に決めたそうです。

企画会議を行なうと、会議のために企画を考えることになる。それでは良いものができない。しかし、企画は考えなければいけない。では、どうやって企画を考えて行くのか? 日常で、皆と話していく中で企画は生まれるといいます。スタジオジブリには、宣伝部もありません。制作している人間が、いきなり宣伝に関わっても良いそうです。確かに、そのほうがテンプレートではない宣伝が生まれそうです。

スタッフからの要望もあり、必要最低限の会議は行なっているそうですが、不要な会議はしないというスタンスでこれまでやってきたそうです。

『カリオストロの城』ポスターで、クラリスが下を向いている理由

スタジオジブリを設立し、宮崎駿監督と高畑勲監督と一緒に仕事をしていくうえで、鈴木さんは、ある助言に助けられたと言います。それは、宮崎・高畑両監督の先輩にあたる、大塚康生さんによるもの。

「宮さんもパクさんも子どもだから、言われたことを気にしちゃダメだよ。大人だと思うと腹が立つけど、子どもだと思えば、腹立たないでしょう。鈴木さんならできるから、やってみなよ」

このことを、鈴木さんは現在まで実践してきたそうです。
今日までやってこれたのは、大塚さんのお陰と語ります。

また、『カリオストロの城』の映画ポスターについての逸話も披露されました。
同作は、作画監督を大塚さんが務めており、ポスターも大塚さんによって描かれています。
このポスターで、クラリスは気を失っており、ルパンに抱えられています。下を向いたクラリスの表情は見えません。普通、ヒロインであれば顔が見えそうなものですが、このイラストになったことにも理由があります。

それは、宮崎駿監督がクラリスを描くのが大好きだったため。作中で、クラリスの顔はすべて宮崎監督が描いていたそうです。
そして、大塚さんがポスター画を描くときに、宮崎監督が「大塚さん、クラリスの顔を描かないでください」と要望したことにより、下を向いたクラリスとなりました。自分以外が、クラリスを描くことが耐えられなかったのでしょう。

まだまだ沢山の話が語られましたけども、「ジブリ汗まみれ」で放送されると思います。
放送を楽しみに待ちましょう。