『夢と狂気の王国』世界最速上映会で行なわれた舞台あいさつの模様を文字起こししました。登場予定ではなかった、鈴木敏夫プロデューサーがスペシャルゲストとして登場するなど、とても賑やかに行なわれました。
文字媒体では臨場感が足りないので、悪ノリした鈴木さんの砂田麻美監督イジリが、シリアスになってしまうかもしれませんけども、終始にこやかな舞台あいさつでした。鈴木さん、なんのプレッシャーもなくて、楽しそうです。



――満席のお客さんに向けて、まずは砂田監督からお願いします。

砂田:
こんばんは。ほんとうに遅い時間にもかかわらず、来ていただいてありがとうございます。
なるべく、ちょっとでも寝ないで観ていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

――続きまして、川上プロデューサーお願いします。

川上:
皆さん、ほんとにこんな遅い時間に、最速上映ということでお集まりいただいてありがとうございました。
今回初めての経験で、0時からほんとに来ていただけるのか、ネットを見守ってきたんですけども、無事すぐに売り切れまして、ほんとにありがとうございます。

――そして、スペシャルゲストの鈴木さんお願いします。

鈴木:
ぼくは、来る予定じゃなかったんですけども。今日、夕方かな、スタッフにね「ちょっと遊びに来てください」って言われて、さっき着いたばかりなんですよ。そしたら、舞台に登るんだって言われて。いったい、ぼくはどうしたら良いんだろうと思ってたら。そうですね、忘れてました。って言うと怒られそうですけど、今日は『夢と狂気の王国』、このあと十何分くらいで初日なんですよね。
彼女がですね、ジブリで……、どのくらい来てた?

砂田:
延べ一年間。

鈴木:
一年間、もう大変だったんですよ。仕事の邪魔して(笑)。
邪魔したよね?

砂田:
いえいえいえ。静かに、お地蔵さんのように。

鈴木:
でも、彼女はね、感心したのは、自分の存在を消す? それがすごく得意で。それで、ハッと気がつくとカメラを構えてる。
それを、この映画で、予告編だけで言いますと、常に彼女のカメラを意識して、コメントし行動してたのが宮崎駿です。

川上:
それは、鈴木さんじゃないですか。

鈴木:
アハハハ。
はい。すいませんね、ぼくだけ長くなっちゃって(笑)。

――それでは、野中さんもお願いします。

野中:
スタジオジブリ制作業務の野中と申します。ありがとうございます。
あの……、

鈴木:
独身なんですよ(笑)。

野中:
あの、すいません(笑)。登場する予定のなかった鈴木さんが、ここにいるもんで。私、なんだかいる意味が無いなという感じに、いきなりなってしまった状況なんですけど。
そもそも、この作品、スタジオジブリが対象ということで。ですから、出演者ってさっきご紹介があったんですかね。出演というか、ドキュメンタリなんで被写体かなという感じですよね。そういう被写体が、こういうところでご挨拶を、なに言ったら良いんだって感じがあるんですけど。

鈴木:
きみ、そろそろ黙ったほうが良いんじゃない?(笑)

野中:
あ、すいません(笑)。非常に良い作品が出来たと思います。
よろしくお願いします。

川上:
法務部門担当ということで、言葉の定義が非常に厳格な。

野中:
そうですね。そういうところに、ちょっと足を取られたという感じがあります。

鈴木:
ぼく、思い出したんですけどね。とにかく、彼女がジブリに現われたっていうのか、最初に彼女のセリフで、すごく覚えていることは、何かというとね。なにもドキュメンタリを作りたいわけじゃない。ようするに、ジブリを題材に映画を作りたい。これが、殺し文句だったんですよ。
普通、ほんものを撮るっていうと、まあドキュメンタリですよね。それを映画にしたいっていうのは、映画を作るんだっていうのは、いったいどういう意味なんだろうかと。
それでいうと、映画になったよね。真実は、なにも伝えてないもんね(笑)。

川上:
何を言い始めるんですか(笑)。

野中:
ちょっと、リアクション困ってるじゃないですか、監督(笑)。

川上:
ちゃんと伝えてますよ。

鈴木:
でも、立派な映画になったと思います。ほんとに。

――では、初日を迎える、率直なお気持ちを砂田監督からお聞かせください。

砂田:
先週やっと完成したので、ほんとは映画って三ヶ月ぐらい前にできて、ゆっくりお披露目しながら初日を迎えるんですけど。先週までやってたので、まだちょっと心が半分ジブリにあるっていう感じで、ふわふわしています。

鈴木:
あの、みんなに迷惑かけたよね。

砂田:
すいませんでした。申し訳ありませんでした。

鈴木:
ね、川上さん。

川上:
いえいえ。

野中:
プロデューサーの立場から、「そうですね」って言えるわけないじゃないですか。

鈴木:
なんて言ったら良いのかなぁ。凄いよねぇ。人に迷惑かけてる自覚はあるの?

砂田:
すいませんでした。

鈴木:
いや、すいませんじゃなくて。好きだよね、迷惑かけるのが。
みんなをハラハラドキドキさせるわけでしょう? それ分かってるの?
で、みんなをヤキモキさせ、ハラハラドキドキさせ、それで引きずり回すんですよ。
それで、これはね、彼女の師匠である――パンフレットを買っていただくと、そのことも指摘がありましたけどね、ぼくも片鱗っていうのかね、かなり見ましたね。なかなか大変な監督ですよ。
全部マイペース。で、段取りでいうと、こうならなきゃいけない、って段取りは彼女のその日の気分によって、全部壊れるわけですよ。そうだよね? そうでしょ? 川上さん。

川上:
いやいや。でも、ほんとに監督っていうか、クリエイターとして拘る力が凄いですよね。

鈴木:
で、ぼくその映画を作りたいっていうのは、良いなと思ったんだけど。説明聞いてると、何言ってるかさっぱり分からないですよ、彼女。なんか、いろいろ言ってたじゃない、最初。あの、エチオピアの少女がさ。

砂田:
何言ってるか、全然皆さんポカンとしてますよ。

鈴木:
いや、言い出したんですよ。「鈴木さん、エチオピアの少女を登場させたらどうですかね?」って。唐突なんですけどね。

野中:
この映画に登場させたらって?

鈴木:
そう。ぼくは、なんのことかさっぱり分からなくて、そしたら、今ジブリに起きてることっていうのか、ジブリを追いかけながら、一方でエチオピアの少女を追いかける? そしたら、それが、どこかで結びつくんだ。って彼女が言ったんですよ。それで、ぼくはそれを聞きながらね、何を考えてんのかな、この娘って(笑)。

砂田:
すごい頷いてらっしゃいましたよね?

鈴木:
で、そこからね、しばらく経ったら、「鈴木さん」ってきいてきたんですよ。なにかなと思ったらね、「ナマズってどう思いますか?」って(笑)。言ったよね?

砂田:
言いました……。

鈴木:
主人公はナマズだって言うんですよ。すごかったよね。

砂田:
ナマズの案は、先月ぐらいまで残ってました。

野中:
スタジオの中でナマズを飼ってるんですけど、そのナマズのことですね。それ言わないと、ますます分かんないですね。

鈴木:
いや、分かんないことを分かんない、って言いたかったのよ。
だけど、映画観るとさ、そういうふうに見えないじゃない。そういう無茶苦茶な人が作った映画に見えないですよね。なんでなんですかね、あれ。

川上:
そうですよね。砂田さんが一番最初、4月ぐらいに作られた映像を観て、あれで初めて「あ、ちゃんとしたもの作るんだ」って。

鈴木:
おそらく皆さんね、いいですか、たぶんご覧になった皆さんは、ずいぶんと彼女は賢いんだろうな、って思うはずなんですよ。
でも、ぼくは先に言っておきます。ほんと無茶苦茶な人です。

野中:
いや、でも、そういう砂田さんが、こういう映画を作れたっていうのは素晴らしいことだなと(笑)。

鈴木:
なに言ってんだ、きみは(笑)。

野中:
まとめないといけないかなって(笑)。

鈴木:
奥田さん、そんなとこ座ってないで。重要な登場人物だよね?
(客席にいる、日テレの奥田プロデューサーに向けて)

砂田:
はい。

鈴木:
奥田さんもここに上がって。ついでだから、皆さんにご紹介しますね。
この映画のなかで、アイキャッチっていうのか、重要な役割を……。
今から(映画で)観ていただくんで、せっかくだから生を最初に見ていただこうかなと。

野中:
私よりも明らかに出てますね、奥田さんのほうが。

鈴木:
ちょっと、こちらに。監督の隣に。

(客席から奥田プロデューサーが登場)

鈴木:
酔っ払ってるんじゃないですよ?

奥田:
日本テレビの奥田です。皆さん、こんばんは。
ええ、ほんとに、最後まで頑張りましょう。

鈴木:
何かヒントはないの? 奥田さんがどう扱われているか。

奥田:
ヒントは、この初号を観るまで、どういうふうに描かれているか、さっぱり分からなかったんで、心配で初号を観ました。
で、ネコが出てくるとかね、非常に可愛らしいネコが出てきます。

鈴木:
ウシコ。

奥田:
ウシコという可愛らしいネコが。ジブリで飼ってるんですけども。ウシコとぼくが、ちょうどいい具合に出てくるらしいので、皆さんぜひ楽しみにしてください。

鈴木:
注目してください。

――奥田さん、ありがとうございました。川上プロデューサーにとっては、初のプロデュース作品になるかと思うんですけど、一番苦労した点と、見どころなどがあれば。

鈴木:
それは監督ですよ(笑)。

砂田:
すごいネガティブキャンペーンが、もう……貼られまくってますね。

川上:
至らないプロデューサーで申し訳ないなって。
初号試写会のときに、名前を間違えてしまいまして。砂田あさみ監督とか言っちゃったんですよね。
初号で初めて砂田さんの本名を知りました。

砂田:
「マミちゃんの冒険」って書いてあるのに、マミちゃんっていうのはあだ名だと思ってたみたいで。

川上:
鈴木さんがつけた、あだ名だと思ってたんですよ。本名はあさみなのに、とか思ってたんですけどね。

砂田:
衝撃的でした。一年間、名前知らなかったんだって。

鈴木:
映画のいろんないきさつがあってね、キャッチコピーっていうのをこの映画の場合、ちょっとぼく手伝ったんですよ。ポスターその他を見ていただいた方は、分かってらっしゃると思うんですけどね、「ジブリにしのび込んだマミちゃんの冒険」。ぼくは、なんでそういうコピーをつけたかっていうとね、責任は全部、砂田麻美だよってことを言いたかった(笑)。
でも、彼女はほんとう、麻美ちゃんっていうのは、実は恥ずかしいんですけど、自分の娘が麻美って名前で。それでいうと、なんか親近感あったよね?

野中:
そういう理由でつけたんですか……(笑)。

川上:
そういうことですか?(笑)

――宴もたけなわでございますが、もうまもなくですね、12時が迫ってまいりました。野中さんから大切なお知らせを。簡潔にすみません。

野中:
あの、この映画終わったあとに――11月16日になります、全国の劇場で配られます「『かぐや姫の物語』プロローグ序章」という、6分の特別映像が入ったDVDとブルーレイのセット。これを皆さま、お帰りのときにお渡ししますので、どうぞご覧になってください。

――もうまもなく、3秒前になりましたので……2、1。あ、12時になりましたー!

鈴木:
ばんざーい!
じゃあ、どうも、よろしくお願いしまーす。

SWITCH Vol.31 No.12 ◆ スタジオジブリという物語 ◆ 責任編集:川上量生
スタジオジブリの人びと、特に高畑勲、宮崎駿、鈴木敏夫という3人が織り成す人間ドラマは、その作品と同じくらいに面白いのではないか……。現在、スタジオジブリで修行中のドワンゴ会長・川上量生を責任編集に迎え、高畑勲14年ぶりの新作『かぐや姫の物語』公開、宮崎駿引退表明など、新たな物語が動き出したスタジオジブリの現在をドキュメントする

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