もののけ姫 耳をすませば

ジブリ作品の中でも、最もアクション要素の強い『もののけ姫』。片や、日常生活をベースに、思春期の心の動きを描いた『耳をすませば』。対極にあると思われる両作品ですが、宮崎駿監督によると「同じ基盤に立ってる」といいます。
どのような思いで、この両作品は作られたのでしょうか。



宮崎駿監督の著書『折り返し点―1997~2008』に収録されたインタビュー記事をふり返ってみましょう。『耳をすませば』と『もののけ姫』が対になる作品であることが語られています。

『耳をすませば』と『もののけ姫』は対になる作品

宮崎:
僕は思想的にいえば『耳をすませば』と『もののけ姫』が同じ基盤に立ってると思っているんですが。

――どこがですか?

宮崎:
『耳をすませば』はここまでは言える、ここから先のことについては触れないでおこうと、はっきり線を引いて作っています。そのとき触れなかったものが『もののけ姫』の中にある部分なんです。僕はコンクリートロードの中で暮らしている人間たちが、どういうように生きていくかというときに、別に新しい生き方があるわけじゃない、クラシックな生き方しかないと思っていますので、そういう生き方でいいんだという指摘をし、そういう生き方をする人にエールを送りたかったのです。そして、自分たちが生きている世界はこういう世界なんじゃないかということを示したかった。順番は逆になりましたけど、『耳をすませば』も『もののけ姫』も、そういうことで作っています。

  • 折り返し点―1997~2008 宮崎駿