鈴木敏夫 シン・ゴジラ庵野秀明総監督による、大ヒット作品『シン・ゴジラ』。本作が庵野総監督によって作られることになった背景には、ジブリのプロデューサー、鈴木敏夫さんの働きがあったといいます。
東宝のプロデューサーに、鈴木さんが庵野さんを紹介したところから、本作のプロジェクトは進行していき、歴史に残る名作ゴジラが作られることになりました。



『シン・ゴジラ』が作られることになった背景と、映画の感想について、2016年に行なわれたインタビューにて鈴木敏夫さんが語っています。

鈴木敏夫、庵野秀明を語る(公開前)

──鈴木さんは、庵野秀明監督とは30年来の仲になるかと思うのですが、庵野監督の最新作「シン・ゴジラ」は、やはり気になりますか?

鈴木:
本当のこと言うとまずいかな(笑)。いやー、どこまでしゃべっていいんだろうな。庵野と東宝の関係性を作ったのは、どうも僕みたいなんですよ。それで庵野が「シン・ゴジラ」をやることになったらしく、「これ作れるようになったきっかけは、鈴木さんですよ」ってお礼を言われたんだけど、僕は忘れててね。あ、そうだったのかと(笑)。

──そんな経緯があったんですね。庵野監督にどなたかを紹介されたと。

東宝の(プロデューサー)市川南です。で、彼が「シン・ゴジラ」をやることになった。今、僕が彼から聞いているのは、これまでにない「ゴジラ」というよりは、最初の「ゴジラ」に戻ってみようかみたいな話。それ以上のことは聞いてないんだけど、「本当にゴジラが現れたら、日本の政府をはじめ、みんなどういう対応をするんだろう?」っていう物語のきっかけだけ聞きました。ゴジラ来襲もそうですけど、予測できない大災害が起きたときに組織がどう動くのかという話を聞いて、へえ、面白いとこ見つけるなと思いました。

──ポスターにも「ニッポン対ゴジラ。」とありますね。

そういう話なんでしょうね。市川南から何度も「庵野さんを紹介していただいてありがとうございました」って言われるので、よほどの傑作になったのかと想像しているんですよ。というわけで、僕、「シン・ゴジラ」のフィクサーです(笑)。

(中略)

──宮崎駿監督は「宇宙人みたいだった」と初対面の庵野監督の印象を語っていますね。

鈴木:
まあそういう感じですよね。僕がその次に会うのは「火垂るの墓」じゃないかな。いろいろやってるうちになんとなく顔見知りになったんですけど、そのテロリストよろしくな風貌のときはあんまり近付かなかったですよ、何されるかわからないから(笑)。「(王立宇宙軍)オネアミスの翼」のときはまだジブリが吉祥寺にあって、庵野たちは吉祥寺の神社のちょっと奥のほうで作ってたんです。僕らがたまに遊びに行くと、庵野が一生懸命やっていて、その様子をすごく覚えてますね。ああこういうものが作りたいんだなと思って。宇宙飛行士への憧れがはっきりと描かれていて、あの映画はやっぱり面白かったですよ。

(中略)

──鈴木さんご自身が最初に庵野監督の才能を感じたのはいつですか?

鈴木:
処女作にその才能は垣間見えると言うけど、(「風の谷のナウシカ」の)巨神兵を見たときじゃないですかね。粘り強くてすごいシーンになってたんで。その後公表していると思いますけど、実は「ナウシカ」の中に幻の絵コンテがあったんです。何かというと、巨神兵と王蟲(オーム)の戦い。これをやっぱりやりたかったといまだに言ってますからね。ついでだから言っちゃうと、彼はある時期、「ナウシカ」を自分で映像化したいとも言ってました。僕は面白いなと思ったんですよ。宮さんの作った「ナウシカ」はあるけど、庵野の作る「ナウシカ」ってどうなるんだろうと。「エヴァンゲリオン」の最初のテレビシリーズがすごく面白かったですけど、注目したのが、その(エヴァンゲリオンの)デザインですよね。巨神兵じゃんって(笑)。要するにトラウマになっていて、結局彼が何をやってるかっていうとね、「ナウシカ」のその後って感じでしょ?(笑) 僕はそう思いました。

(中略)

──ゴジラ自体はCGですが、「シン・ゴジラ」も実写映画です。

アニメーションはともかく、彼の実写はいわゆるエンタテインメント性は薄かったでしょう。でも「シン・ゴジラ」はそうはいかない。そこがいったいどうなるかっていうのが楽しみですよね。総監督って言ってるけど、全部現場に出てたみたいだし(笑)。

(中略)

──お話を聞いていると、庵野監督から見た鈴木さんは完全に恩人ですね。

鈴木:
いやー、あいつはそんなこと感じてない。僕は利用されてるだけ(笑)。堂々と言うんですよ、鈴木さんみたいな業界で経験を重ねた年寄りは若い人の面倒を見るべきだって(笑)。だから自分のいろんなものを手伝えって言うんですよね。言うことを黙って聞いてたら次から次へといろんなことをやらなきゃいけなくて大変なんです。でも本当に彼は面白いですよね、いろんな意味で。

(中略)

道場を訪ねて宮崎駿と高畑勲に果たし合いを申し込んで、それでマスターしたっていう感じなんですよね。それが非常に面白かった。強く印象に残ってますね。いやあ、30年以上付き合うとこういうことになるんですね。いろんなエピソードを思い出します。そういうのは別にしても、とにかく毎回普通の作品は作らないから、監督としての期待値が高い。今度は何やるんだろうと期待してしまう存在なので、「シン・ゴジラ」も楽しみですよ。

鈴木敏夫が語る『シン・ゴジラ』(公開後)

──鈴木敏夫さんは『シン・ゴジラ』の何処に魅力を感じていらっしゃいますか?

鈴木:
それは映画を見れば一目瞭然で。

「あれから五年、庵野秀明の3.11.」この一言に尽きます。

庵野秀明が3.11.以降のこの五年間に勉強したことを、全部つぎ込んでいるのが、『シン・ゴジラ』だと僕は受け止めています。

(中略)

──庵野監督が『シン・ゴジラ』を作り上げる上でベースとなったものは何でしょうか?

鈴木:
我々の仲間で数回、被災地に行ったことがあるんです。宮崎(駿)も行ったし、庵野も一緒に行きました。 その際に、庵野は瓦礫の山を写真やビデオで全部撮っていたんですよね。

その時の僕は、それら写真やビデオはエヴァのための資料映像で、いつか映画という形で世の中に出すんだろうなぁ、と思っていたのですが、それが実は、エヴァではなく、今回の『シン・ゴジラ』に活かされていて。そう来たか、と。

なので、最初に言った通り、この映画は
「あれから五年、庵野秀明の3.11.」なんですよ。

みんながこの映画をどのように受け止めているのかも気になりますが、僕にはそれ以上でもそれ以下でも無いんです。
見ていただくとおわかりの通り、ゴジラを原発の事故や津波の象徴として扱っているでしょう? そして、3.11.の津波が首都を襲ったらどうなるか?というストーリーなんです。

これは、庵野が現代と真剣に向き合って作り上げた映画です。

──『シン・ゴジラ』に関するエピソードがあれば教えてください。

鈴木:
ひとつだけエピソードをお話しましょう。

今回の登場人物の名前(ファーストネーム)は全部庵野さんの奥さん(安野モヨコ氏)のマンガの登場人物から取っているんですよ。主人公の長谷川博己が演じた”矢口蘭堂”のファーストネーム”らんどう”も奥さんのマンガに登場する名前なのですが、漢字がマンガとは違うんですよね。で、なんでかなぁ、と思っていたら、僕の孫の名前を使ってくれていたんですよね。2回ほど劇中にも出てくるので、僕も「あっ」と思って。それで映画を見終わった後に庵野に聞いてみたら、「鈴木さんが喜んでくれると思って」ってね。

以上でエピソードは終わりです。

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