絵本『レッドタートル ある島の物語』スタジオジブリ最新作『レッドタートル ある島の物語』が公開されることに先駆けて、同作の絵本が発売されました。
マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督の詩情あふれる長編アニメーションの絵本化です。同書は、作家の池澤夏樹さんが文章・構成を務めています。



映画『レッドタートル ある島の物語』の本編には、セリフが一切ありません。しかし、絵本にするからには、文章をつけなければいけません。

池澤さんは、誰が語り手となるべきか考えました。そのときの答えが、「ある島の物語」という副題にも繋がっていくことになったのです。

先日、LINELIVEで放送された、池澤夏樹さんとヴィット監督との対談においても、絵本について語られました。絵本版『レッドタートル ある島の物語』は、原作者のヴィット監督も満足の仕上がりとなったようです。

饒舌ではなく、限られた言葉で語られていて面白い

鈴木:
マイケルの絵って、非常に素晴らしいんで、これはもしかしたら絵本を作れるんじゃないかと。池澤さんの解説文を読みながら、池澤さんだったら、その絵本の構成及び文章を、ちゃんと書いてくれるんじゃないかと。そんなふうに考えました。

池澤:
なんでぼくなのかなと思ったんですけど、ともかく映画が気に入ったのは間違いなくて、なんらかのお手伝いができると良いなって。観てすぐキャッキャとわかるような簡単な映画ではない。難しいわけじゃないんだけど、なかなか味があって、どうやって観るのが良いか、ぼくなりにちょっと書いただけなんですけど。そしたら、その後で、絵本も作ろうって話になって。そうすると、テキストの部分は、ぼくが書かなきゃいけない。そんなことで、映画の公開がもうすぐで、絵本ももうすぐできると。という、今夜であります。

鈴木:
今日は、ほんとうに来ていただいてありがとうございます。もう、じっくりお二人で話し合っていただきたいんですけど。
その絵本っていうのが、まだ表紙なんですけど、こんな形の本なんですよ。この中身というのが、まだ本にはなってません。ゲラなんですけどね。めくると、こうやって絵が出てくる。
マイケルに、この絵本を作るっていうことを提案して。ぼくは、池澤さんっていう人に書いてもらうと。池澤さんがおっしゃるには、『レッドタートル』という映画のひとつの大きな特徴として、セリフが無いんで。そしたら、池澤さんが、島が語り手となる、そういう構成案はどうかと。それを聞いたときに、ぼくはなるほどなと思いました。そういうことで言うと、そこで成功を確信したんですけど。
ちょうど昨日、マイケルにもこれを見てもらったんですよ。この言葉を英語にしたものをマイケルにお渡ししたので。構成および文章について、感想をマイケルのほうから言ってもらおうかなと思います。

マイケル:
とても好きです。島が話しかけるという、そういった視点はとてもオリジナリティがあると思いました。その選択肢というのは、納得がいきました。というのも自然は、人間の向う側に存在しているのではなくて、自然は私たちと同じように生きている。だから、自然が語るというのも、自然な成り行きだったんじゃないかと思いました。
ストーリーの中に、いろいろなエレメントが出てきますけども、それを直観的に捉えているなという印象を持ちました。あまり、饒舌に語り過ぎているのではなくて、限られた言葉で語られているという意味でも、面白いと思いました。

鈴木:
原作者として、違和感のあったところはないんですか?

マイケル:
実は昨日、初めて本を見せていただくまで、実はちょっとナーバスだったんですね。っていうのも、自分自身この作品と長い間かかわってきて、この作品に言葉を載せるのが自分自身は難しかった。だから、どういったものが出来るんだろうっていうので、期待もありましたけれど、ナーバスでもあったんです。

池澤:
ぼくは、その言葉を聞くまで、たいへん不安でナーバスでした。でも、気に入っていただいて、安心しました。ぼくがやったのは何かって言いますと、映画から絵本を作るというので、まずスチールというかセル画というか、画面をプリントしたものを100枚ぐらい貰って、そこから選びながらストーリーを作っていくと。ストーリーの流れは決まっているから、映画に沿って。そこから、どことどこを抜き出して……あんまり絵の数を増やして、説明にはしたくない。つまり、映画の絵解きにはしたくない。それだったら映画を観れば良いわけだから。だから、選んだうえで、なるべくさっくり、エレガントに絵本にしたいと。
いちばん肝心の、なぜ島に語らせたかと言うと、せっかくセリフがないんですよ。その静かな感じが、すごく良いんですよ。だから、彼らにセリフを喋らしてしまったら、なんにもならない。

鈴木:
ぶち壊し。

池澤:
壊してしまう。だけど、誰かが喋らなきゃいけない。その誰かは、まったくニュートラルなナレーターなのか。でも、それもつまらないなと。そこで、彼らを受け入れて、生活をさせて、子供が産まれて、というのを一部始終見ていたのは誰かと。島だ、と気が付いて。それが、『レッドタートル ある島の物語』とサブタイトルを付けましょうよと言った理由でもある。
そこまでやると、あとは楽しく、どんどん進みました。それも全部、やっぱり元の映画がほんとうに良いから。というところで、映画そのものの話に行きましょう。

鈴木:
『レッドタートル ある島の物語』ってタイトルなんですけどね、池澤さんに解説をお願いしたときの雑談の中で、レッドタートルっていうと、いわゆる亀じゃないですか。そうすると、日本でそれを公開するとき、タイトルとしてどうなんだろうと。ようするに、亀のイメージっていうと、日本ではどうしても浦島太郎になってしまう。だから、そういうことで言うと、何か付け加えたほうが良い。というなかで、サブタイトルを付けたらどうかって、池澤さんに提案していただけて、その場で「ある島の物語」って。ぼくとしては、すごいピンときたんですよね。すごく嬉しかったです。

レッドタートル ある島の物語
原作:マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット
構成・文:池澤夏樹

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