おもひでぽろぽろ高畑勲監督の『おもひでぽろぽろ』で、主人公・タエ子とトシオのキャラクターは、声優を務めた今井美樹さんと柳場敏郎さんがモデルになっていることは有名ですね。
しかし、声優のキャスティングが先行でモデルとなったわけではありません。先に、二人をモデルにキャラクター設計をし、後に声優を務めることが決まりました。



なぜ、この二人がモデルに選ばれることとなったのでしょうか。そこには、これまでのアニメーションにはないキャラクター作りをするための、高畑勲監督のこだわりがありました。

アニメ映画の新たな可能性を開拓したジブリの意欲作

宣伝ポスターが、露出し始めた1990年後半。このとき、小学生時代のタエ子のキャラクターは完成していたけれど、27歳篇については、まだ未決定でした。実在の日本人を感じさせる立体的なキャラクター、という高畑勲監督の要望を実現するため、近藤喜文さんの試行錯誤がつづきました。

高畑監督は、アニメーションでまだ試みのない「にっこり顔」を作りたいという考えました。
従来のアニメーションでは、半月状にあいた口や、歯を見せた笑顔などが主流です。しかし、高畑監督は頬の筋肉を感じさせる、実際の人間のような笑顔を目指していました。

このとき、その参考に、タエ子とトシオのモデルに、今井美樹さんと柳場敏郎さんが使われたことが、後のキャスティングのきっかけとなりました。
また、日本人の骨格のヒントを得るため近藤さんは、高畑監督と共に彫刻家の佐藤忠良のもとを訪れたこともあったといいます。

スタジオジブリ作品関連資料集Ⅲ

『映画を作りながら考えたことⅡ』で語られた、『おもひでぽろぽろ』の魅力的なキャラクター作り

おもひでぽろぽろ

――「火垂るの墓」でもそうだったように、キャラクターの何気ない仕草が、ひとつの魅力として、こちらに迫ってくるようなものになりそうですね。

高畑:
普通の人を描いているといっても、“平凡だなあ、平凡だなあ”と思って見るのは、辛いですよね。こちらが判断することではありませんけれど、普通の人でありながら魅力的に描くというのは、結果として、そういうことも含めて考えたら、かなり大変な作業でした。そのために、いろいろ観察したわけですが、しかしただ漫然と見ているだけじゃなくて、具体化しなきゃいかんわけです。自分の身の回りを含めて、TVやビデオも見たりして勉強しましたが、やはり大きかったのは、声の出演をしてもらった今井美樹さんと柳場敏郎さんの個性ですね。ずいぶん参考にさせてもらいました。

映画を作りながら考えたことⅡ

高畑勲が語る、タエ子とトシオ

タエ子・今井美樹について
高畑:
とてもいい感じの笑顔だと思いました。年齢も近いし、日常感覚もある。それに、たまたま彼女のディスクジョッキーを聞いたとき「自分がいかにして、少女期の精神的な弱さを克服してきたか」ということを語っていたのです。思わずわが意を得たり! と思いました。

トシオ・柳場敏郎について
高畑:
アニメの美形といえば、西洋的な円筒系の顔。そうではなくて、ほおの骨の張った、日本人を意識した青年の顔を作りたかったのです。

『月刊アニメージュ』の特集記事で見るスタジオジブリの軌跡

 

『おもひでぽろぽろ』のイメージボードと絵コンテ


百瀬義行さんによるイメージボード。このときのタエ子のキャラクターは、すこし映画のものと違いますね。
まだキャラクターデザインが決まる前のものと思われます。


こちらは絵コンテ。プレスコが行なわれたあとに、絵コンテが作られたので、こちらのキャラクターは今井美樹さん似のものになっています。

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