『かぐや姫の物語』の公開まで、ちょうど一ヶ月となりました。これまでに出ている『かぐや姫』情報をまとめてみました。
『風立ちぬ』のときと比較すると、情報が若干少ないような気もしますが、これは高畑勲監督がマスコミ嫌いのためでしょうか。



『かぐや姫の物語』と『アルプスの少女ハイジ』の共通点

『かぐや姫の物語』中間報告会見で、主演のかぐや姫を演じる朝倉さんと鈴木敏夫さんの会話のなかで、『かぐや姫の物語』と『アルプスの少女ハイジ』の共通点が明かされました。

鈴木:
子どもの時『ハイジ』って観たことある?

朝倉:
観てなかったですね。

鈴木:
観てなかったか。じゃああまり興味ないよね(笑)。

朝倉:
でも、『ハイジ』のストーリーは分かってましたし、どこかで見せてもらったので、映像の記憶はあるんですけど。

鈴木:
もうすぐ終わるじゃない、仕事としては。アフレコね。でもちょっとハイジ観ておくと面白いよ。何故かと言うと、この『かぐや姫』の話ね。ハイジと関係あるんですよ。

朝倉:
そうなんですか?

鈴木:
高畑勲の作った『ハイジ』とね。『ハイジ』は原作でいうと、17ページくらいのすごく短い物語なのよ。で、中身はキリスト教の布教の話なのよ。

朝倉:
そうなんですか?

鈴木:
それを、高畑さんは毎週30分かけてテレビ化するんですよ。起きた出来事はそのまんまなんだけど、その時ハイジはどう思ったのか、ということで言うと(『かぐや姫の物語』と)同じことやってんですよ。実は。

朝倉:
なるほど……。

鈴木:
で、俺もある日ね、まあ『風立ちぬ』を公開してね、『かぐや姫』が遅れてたじゃない。そんな時にある日、宮崎駿が「鈴木さん大丈夫?」と聞きに来たことがあったのね。で、俺ちょっと説明したのよ。内容はどういう風になってんの、と言うからね。宮さん全部は見てなかったから。
で、僕がね、物語はそのままやってるんだけど間に彼女(かぐや姫)の気持ちが入ると喋った瞬間ね、宮崎駿の顔色が変わったんですよ。何故かと思ったらね、ハイジだと言いだしたの。「それ、『ハイジ』をやろうとしてんだよ鈴木さん」て。
実は、宮崎駿と高畑勲という人は、それこそコンビになって、『ハイジ』のテレビシリーズを作ったのよ。スイスにロケハンに行ったり、苦労しながら作った。それで終わったあと、喜びも悲しみもあったと思うんだけど、全部が終わった後に「いつの日か日本を舞台にハイジを作ってみたいですね」と、そんなことを宮さんが言ったのよ。そしたら高畑さんも「それはやるべきですね」と。それを話したのが1971年か72年くらい。今から40年前。

朝倉:
宮崎さんはそれを思い出したんですか?

鈴木:
それを宮さんは覚えてて、すごい喜んで「観たい」と言いだしたの。
同時に突然「高畑勲、健在!」とか言いだしてね(笑)。

朝倉:
はい。

鈴木:
だから実は、『ハイジ』へのオマージュのシーンが色々あるのよ。さっき見ていただいた映像でもね、かぐや姫が十二単を走りながら一枚一枚脱いでいく。これはね、ハイジの中でもあるのね。山に着ぶくれて行くんだけど、一枚一枚脱いでいくっていうシーンがあるわけ。(それを知ってから)2回観ると、すごいのよ。

朝倉:
これは観ます! 観ないとだめですね。

 

『風立ちぬ』で従来のアニメーションを終わらせた宮崎駿監督と、
『かぐや姫の物語』で新しいアニメーションを始めた高畑勲監督。

常に、新しい演出スタイルを生み出す高畑勲監督。
水彩のようなタッチがそのまま動く特報映像を見て、宮崎駿監督も「結局は、パクさんの歴史なんだよ」と唸りを上げたのだとか。

西村:
こういうのを作りたいと思ったのは高畑さんだけでなく、宮崎さんも「こういうの作りたいと思ったことがある」と言ったんですよ。つまり人間の描いた線がスケッチのように画面に出てくる。こういう風なものを作りたいと思ってたんですけど、従来の、既存のシステムではなかなか実現できなかったんですね。

で、今回このスケッチで描いたような水彩のようなものはスタジオジブリでは作れませんでした。で、誤解があるかもしれませんが、脚本ができあがったときに、僕は鈴木さんから、高畑さんを連れて出てけと言われました。それは今現在のスタジオジブリのスタッフとその仕組みを使ってこの画面は実現できないと。高畑さんと外にもう一つのスタジオジブリを作れと。

だから僕は、高畑さんと一緒に第7スタジオを作りました。そこにフリーのアニメーターを集めて、高畑さんが実現したいイメージなどを共有しました。これは一つの到達点であるという風に高畑さんは言っています。それはフィルムを作ってる全スタッフも同じことを思っているでしょう。

それで僕はこんなことも言いました。「10年後この作品を振り返った時に、恐らくこの作品はあるアニメーションの画期、まあエポック(メイキング)と言われるだろう」と。
『かぐや姫』の前と後ではたぶん何かが変わる、そういうものになると思います。付け加えるのであれば、宮崎さんは『風立ちぬ』の時からもうアニメーションを終わらせると思っていらっしゃると思うんですけど、僕は77歳の高畑勲という監督は、この作品で新しいアニメーションを始めようとしてると思います。最後と言いましたけど、この作品が一つの流れを生むんじゃないかと思います。

 

『かぐや姫の物語』は三つの疑問に答える映画

『かぐや姫の物語』制作発表会見。プロデューサーの西村義明氏によるコメント。
今回作成された『かぐや姫の物語』は、謎とされてきた三つの疑問に答える作品になるとのこと。

・かぐや姫は、数ある星の中から、なぜこの地球を選んだのか?
・三年半、地球でなにをしていたのか?
・彼女の犯した罪とは、そして罰とは、なんだったのか?

西村義明プロデューサー:
あらすじなんですけども、高畑監督以下ぼくらが作ろうとしているのは、皆様よくご存知の「竹取物語」のかぐや姫です。それを、原作に忠実にやろうとしている。
改めてご説明すると、「今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ」なんて一説から始まりますけども、簡単に言いますと、竹が光ってて、切ってみたらその竹の中にですね、小さな女の子がいる。
爺さん婆さんが、それを持って帰って、自分の子どものように育てることを決意する。

そうすると、三月も経たないうちにですね、小さな女の子がどんどん大きくなって成人女性になる。成人女性になってみたら、絶世の美女である。その噂を聞きつけて、全国から貴族たちが押し寄せて、「結婚してください、結婚してください」と求婚に訪れる。そのすべての求婚を断って、ついには時の最高権力者である、神門の求婚も袖にふってですね。袖にふったと思ったら、月を見て泣いているらしいと。
爺さん婆さんが尋ねてきたらですね、「私は月の人間です。今度の十五夜の晩には、月に帰らなければなりません」と言って、泣きながら月に帰っていきましたとさ。
こういう話ですね。

お話を聞いていて、どう思われたか? かなり、荒唐無稽なナンセンスなお話です。こんな意味不明な原作をですね、商業映画にしようと。ましてや、超大作、娯楽作品に仕立て上げようと考えたのが、齢77歳、高畑勲監督です。

実は、この企画を高畑さんが考えたのは、今から50数年前。当時、20数歳でしょうか。
彼は当時、東映動画というアニメーションスタジオにいました。その隣には、東映という映画会社がありまして、そこに、「内田吐夢」という監督がいらっしゃって。その監督がですね、「私はかぐや姫の物語を作ろうと思う。その企画をみんなで考えてほしい」と言ってですね、高畑さんもいろいろ考えたみたいなんです。
でも、ついに企画を提出することがないまま、映画にすることはないまま、雲散霧消していく。

それから、月日が経ちまして、10年経ち20年経ち、スタジオジブリで長編を作っていくなかで、今から8年前とかかな、鈴木さんに僕が呼ばれまして、「おまえ、明日から高畑さんの担当しろ」って言われて。
「企画は?」ってきくと、「かぐや姫」って言うんですよ。
それを聞いたときですね、なんで今更このスタジオジブリが「かぐや姫」なんか作るんだろうって。
おそらく、ここにいらっしゃる方の中でも、多くの方が思ってらっしゃるかもしれません。僕も思いました。

それで、僕は率直にきいたんです、高畑さんに会ったときに。
「高畑さん、なんで今かぐや姫なんですか?」って言ったらですね、高畑さんっていうのは、ムッとするんですね、そういうとき。
ムッとするとですね、一種の狂気っていうんでしょうかね。すごいオーラをおびて、怖いんですよね。
それで、こう言ったんです。
「あなた、かぐや姫知っているんですか?」
僕は、「知ってますよ。絵本で見てるし、娘にも読み聞かせしてますよ」って。

「じゃあ、私の質問に答えられますか?」って。「まず、第一にかぐや姫は、数ある星の中から、この地球を選んだのか。そして、なぜ去らねばならなかったのか。答えられますか?」
で、僕は全然答えられなくて。

それで、第二に、かぐや姫っていうのは、原作のなかで、少なくとも三年半くらいは地球にいるんですよ。
「そのとき、彼女は、三年半地球でなにをしていたのか。なにを考えて、なにを思っていたのか。これを答えられますか?」って言われて。
僕は分からなくて。

「じゃあ、第三に、原作のなかで、月に帰る前に、かぐや姫は自分の言葉でこう言うんですね。『私は、月の世界で罪を犯して、その罰として、この地に降ろされたのだ』と。あなたは、彼女の犯した罪とは、そして罰とは、なんだったのか。それを答えられますか?」って。
僕は、全部答えられませんでした。どれひとつとして。

で、高畑さんは、こう言いました。「私の映画は、そのすべての三つの疑問、これに答えようとするのが、私の映画です。そのとき、この今の日本で、作るに価する映画が出来るはずだ」と。
そして、もうひとつ、「そのときに、あるひとりの女性の姿が浮かび上がるはずだ」って、そういうふうに言ってました。

 

半世紀を経て

『かぐや姫の物語』のチラシに掲載された、高畑勲監督のコメント

 昔々、五十五年足らず前、東映動画という会社で、当時の大監督、内田吐夢さんを立てて、『竹取物語』の漫画映画化が計画されました。結局実現はしませんでしたが、監督の意向もあって、社員全員からその脚色プロット案を募る、という画期的な試みがなされたのです。選ばれた案のいくつかは謄写印刷のブックレットになりました。

 私は応募しませんでした。事前に演出・企画志望の新人たちがまず企画案を提出させられたのですが、そのときすでに、私の案はボツになっていたからです。私は、物語自体を脚色するのではなく、この奇妙な物語を成り立たせるための前提として冒頭に置くべきプロローグ、すなわち、月世界を出発するかぐや姫と父王との会話シーンを書いたのです。

 原作の『竹取物語』で、かぐや姫は、月に帰らなければならなくなったことを翁に打ち明けたとき、「私は、“昔の契り”によって、この地にやってきたのです」と語りかけます。そして迎えに来た月の使者は、「かぐや姫は、罪を犯されたので、この地に下ろし、お前のような賤しいもののところに、しばらくの間おいてやったのだ。その罪の償いの期限が終わったので、こうして迎えにきた」と翁に言います。

 いったい、かぐや姫が月で犯した罪とはどんな罪で、“昔の契り”、すなわち「月世界での約束事」とは、いかなるものだったのか。そしてこの地に下ろされたのがその罰ならば、それがなぜ解けたのか。なぜそれをかぐや姫は喜ばないのか。そもそも清浄無垢なはずの月世界で、いかなる罪がありうるのか。要するに、かぐや姫はいったいなぜ、何のためにこの地上にやって来たのか。

 これらの謎が解ければ、原作を読むかぎりでは不可解としか思えないかぐや姫の心の変化が一挙に納得できるものとなる。そしてその糸口はつかめた! とそのとき私の心は躍ったのですが、半世紀を経て今回取り上げるまで、この“昔の契り”コンセプトは、長年埃をかぶったままでした。

 私にはいまも、月での父王とかぐや姫のシーンがありありと見えています。父王は姫の罪と罰について重大なことを語り聞かせています。かぐや姫はうわの空で、父王の言葉も耳に入らず、目を輝かせながら、これから下ろされる地球に見入るばかりです……。

 しかし、私はこのシーンを冒頭につけることはしませんでした。『竹取物語』には描かれていない「かぐや姫のほんとうの物語」を探り当てさえすれば、プロローグなどなくていい。物語の基本の筋書きはまったく変えないまま、笑いも涙もある面白い映画に仕立てられる。そしてかぐや姫を、感情移入さえ可能な人物として、人の心に残すことができるはずだ。私はそんな大それた野心を抱いて、『かぐや姫の物語』に取りかかりました。

 このような物語に、いわゆる今日性があるのかどうか、じつのところ、私にはまったくわかりません。しかし少なくとも、このアニメーション映画が見るに値するものとなることは断言できます。なぜなら、ここに結集してくれたスタッフの才能と力量、その成し遂げた表現、それらは明らかに今日のひとつの到達点を示しているからです。それをこそ見て頂きたい。それが私の切なる願いです。

高畑勲

 

キャスト

『かぐや姫の物語』の主要キャストには、昨年亡くなられた地井武男さんも含まれていました。

かぐや姫/朝倉あき
捨丸/高良健吾
翁/地井武男
媼/宮本信子
高畑敦子
田畑智子
立川志の輔
川上陸也
伊集院光
宇崎竜童
中村七之助
橋爪功
朝丘雪路(友情出演)
仲代達矢

 

作品情報

「かぐや姫の物語」(2013年11月23日公開)
原案・脚本・監督/高畑勲
原作/「竹取物語」
脚本/坂口理子
製作/氏家齊一郎
プロデューサー/西村義明
音楽/久石譲、
主題歌/「いのちの記憶」二階堂和美
配給/東宝 
製作/スタジオジブリ・日本テレビ・電通・博報堂DYMP・ディズニー・三菱商事・東宝・KDDI

かぐや姫は数ある星の中から、なぜ地球を選んだのか。この地で何を思い、なぜ月へ去らねばならなかったのか。彼女が犯した罪とは、その罰とはいったい何だったのか。
原作には描かれていないかぐや姫の心とは――。
日本最古の物語文学「竹取物語」に隠された、ひとりの人間・かぐや姫の真実の物語。


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