10月28日より、「次郎長三国志」のDVDボックスが発売されます。
この「次郎長三国志」のジャケットイラストを、尾田栄一郎さんが描き下ろしています。
そして、題字は尾田さんの希望で、鈴木敏夫さんが手がけました。



このDVDを尾田さんと、鈴木さんが手がけることになった経緯というのは、尾田さんが「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」に出演したのが切欠です。

2009年12月の放送で、尾田さんがラジオ出演した際に、『次郎長三国志』の話題でいちばん盛り上がったのが、DVD化への始まりなのでした。

そして、2011年6月19日放送の「ジブリ汗まみれ」に、再び尾田さんが出演。DVDが未発売で、かつて発売されていたVHSも廃盤となっている「次郎長三国志」について、そこに居合わせた東宝の高井社長(当時)にDVD化を直談判したことから、今回のリリースが決定しました。

この詳細は、10月16日放送の「ジブリ汗まみれ」で語られています。

DVDは、それぞれ3枚組で、10月28日に第1集が、11月25日に第2集が、12月16日に第3集が発売されます。
価格は各1万1550円。

2009年に尾田さんがラジオ出演した際の、『次郎長三国志』DVD化の切欠となった、任侠話の一部を書き起こしてみました。
任侠モノに疎い僕には、なんのこっちゃわからない話が多いですけど、聞いていると何故か面白いのが鈴木さんの話術でしょうか。
ふたりが絶賛する『次郎長三国志』。是非見てみたいですね。

 

ワンピースって任侠モノだよね、はっきり言うと

尾田:
古いものに凄い興味があって。大元を辿ったら、落語とか、漫才とか、ほんとうに古いのを聞いていて、昔から。
ちょっと変な子供だったのかもしれませんけど。
中1のときの親からの誕生日プレゼントが、新春寄席のチケットっていう(笑)。

鈴木:
あのね、(ワンピースが)次郎長三国志だってことは、凄くよく分かるんですよ。
第1巻読んでてもよく分かった。

尾田:
なんで、そこに興味を出したかっていうと、昔の漫才師の人たちが、真似をするんですよ。その浪曲だの、それこそ広沢虎造の真似だったかどうかは知りませんけど、ダミ声でこう……。

鈴木:
虎造も聴いたの?

尾田:
大好きです。もう、iPodに入ってますから。虎造ファイルがありますから。

鈴木:
広沢虎造って人は、ほんとうに人気があったのは、僕らの親父の世代なんですよ。
だから、僕は子供のときに、親父がラジオで聴いているのを横で聴いてた。

尾田:
それも変わった子ですね。

鈴木:
まあね(笑)。

尾田:
あれは、聴くべきですよね。

僕は、落語を聴く種族ですからね。
落語は誰でも聴きますね、新しい人たちも聴くし、古典も聴くし。当然、iPodには落語ファイルがありますし。

鈴木:
特にこの人っていうのはないんですか?

尾田:
う~ん……、柳家権太楼。

鈴木:
あぁ、権太楼も好きなの。そうなんだぁ。
僕、権太楼といろいろ喋ったことあるんですよ(笑)。

尾田:
そうなんですか!

あの人は、凄い名人でしょう。
もう、ライブ三昧の人ですよね。

鈴木:
権太楼のテレビを撮ったりしてたんですよ。

でも、やっぱりね、僕は小三治さんなんですよ。
で、その前は、なんていったって志ん朝。
この人はね、亡くなる寸前の丸二年間、追っかけやってたんですよ。
要するに彼が、東京で寄席やホールに出るでしょう、それを全部聴きに行ったの。

あのね『ぽんぽこ』ってね、もう一つの見方は、有名な当時の落語家が全部登場なんですよ。

尾田:
あぁ、なんか、志ん朝がやってたな、っていうのは……。

鈴木:
あれは、だから高畑さんに話して、志ん朝でいきましょうって。
志ん朝さんか、小三治さん、どっちかが良かったんですよ。
でもね、高畑さんって、プレスコっていってね、先に声録るんですよ。で、後で絵を描くの。
だからね、志ん朝と小三治の喋りのスピード、志ん朝が速いんですよ。
それで、映画を短くするには、志ん朝さんが良いっていう(笑)。
で、『となりの山田くん』では、小三治に出てもらってるんです。

尾田:
ジブリの人たちは、落語が好きだな、っていうのは感じてました。
落語は、最近でこそブームになりましたけど、なかなか趣味の合う人はいなかったですね。
学生時代、友達にむりやりカセットテープで聞かせたりして「面白いだろ?」って言うんだけど、全然聞いてないんですよね(笑)。

鈴木:
『次郎長三国志』なんてどっから手に入れたの?

尾田:
ワンピースのアニメを立ち上げる時のプロデューサーなんですけど、その人がまた昔の映画に詳しくて、その人に頼めばいい映画を紹介してくれるかなと思って、いろいろきいたんですけど、そのなかで「これは手に入らないから」って渡されたんですけど……。

鈴木:
僕、持ってますよ(笑)。

尾田:
え、ほんとですか? 見たい! 見たいです!

鈴木:
第何話?(笑)

尾田:
あ、でも、どっちみちあれ未完成なんですよね。10本目がないんですよね。
あれが出来てれば、絶対DVDボックスでしたよね。

鈴木:
あれね、僕、東宝の社長に、出せ出せって言ってるんですよ。

尾田:
あ、未完でも?

鈴木:
そうそう。そんなくだらないことやってるんです(笑)。

でも、あのときの、森繁の演技はやっぱり凄い。

尾田:
凄い。迫真の演技ですよ。
僕は、先に中村錦之助のファンになってたから、錦之助のやってた”森の石松”だけの映画があったから、それを見たんですよ。この人、凄い演技力だなあと思ったら、森繁久弥をあとで見たら、まったく同じ構図だったんですよ。
これを、そのままやれと言われたんだなと思って。

鈴木:
なんで、そんな古いもの好きになったの?

尾田:
ラジオで落語聴いて、漫才聴いて、その漫才の人たちがよく物まねするところから、「こくていただはる!」とかギャグのように言うと、みんなドッと笑うんですよ。なんのこっちゃ分からないんですよ。それは、国定忠治(くにさだちゅうじ)を読み間違えたってギャグなんですけど(笑)。
その国定忠治を僕は知らないから、僕は笑えないっていう。

鈴木:
国定忠治っていうのも、片岡千恵蔵の当たり役。

尾田:
そうなんですか。僕はまだ、国定忠治には手を出していないんです。
なぜかっていうと、『次郎長三国志』と混ざると思うから(笑)。

鈴木:
ハハハ。
着物が違うんですよ。国定忠治が白いんですよ。それでね、襟だけ黒なんですよ。決まってるんですよ、洋服が。

尾田:
そこにも、いっぱい子分がいそうだから、絶対混ざると思って。もっと区分できてから見ようと思って(笑)。
浪曲も買ってあるんですけど、国定忠治の。まだこれは聴かないっていう。

鈴木:
じゃあ、そこら辺になると僕は得意なんだけど、『座頭市』とかは見てないんですか?

尾田:
『座頭市』も全部見てると思います。
任侠モノは大好きです。

鈴木:
ほんとうのこと言うとね、『ワンピース』読んでね、最初の感想「なんだこれ、ヤクザ映画だな」と思ったんですよ(笑)。
分かったの、あれ。『ワンピース』って凄い日本的。任侠モノだよね、はっきり言うと(笑)。

 

「ジブリ汗まみれ」に尾田栄一郎さんが出演した回はこちらです。
詳細はポッドキャストでお聴きください。