“Hoga Holic”サイトにて、石井朋彦さんのインタビューが公開されました。

石井朋彦さんは、以前スタジオジブリで鈴木敏夫プロデューサーに師事して、『千と千尋の神隠し』や、『ハウルの動く城』でプロデューサー補として活躍した方です。

2006年からはプロダクションI.Gに移籍して、押井守監督の『スカイ・クロラ』や、神山健治監督の『東のエデン』などのプロデュースをしています。

これからのアニメーション業界を引っ張っていく方なので、神山さんと石井さんのコンビには期待ですね。



 

スタジオジブリの鈴木敏夫さんこそが、僕の目指す唯一のプロデューサー像

――スタジオジブリにはいつまでいらっしゃったんですか?

石井:
『ホーホケキョ となりの山田くん』(99/高畑勲監督)から『ゲド戦記』(06/宮崎吾朗監督)の製作終了までいました。その後、『イノセンス』(04/押井守監督)という作品でご縁があったので、その流れの中で『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』(08/押井守監督)という作品からProduction I.Gに入ったんです。

――スタジオジブリ時代に学ばれたことでもっとも大きい点はなんでしょうか?

石井:
ジブリの作品は一朝一夕のヒットではなく、『風の谷のナウシカ』(84/宮崎駿監督)から今までの歴史の積み重ねがあるから。僕らもそこを目指していて、単純に興行収入の積み重ねだけじゃなく、この監督、このチームだからワクワクするんだと、常日頃からファンの方に思っていただく事が、なにより大事だと思っています。

――ある種、一つのブランドとして?

石井:
そうですね。アニメーションには3つのタイプがあって、1つは『ONE PIECE』や『ポケモン』に代表される原作ものやシリーズ大作。2つ目はいわゆる“萌えキャラ”ものです。コアターゲットに向けて商品化やイベントなど仕掛けていくマニア向けの作品。3つ目が「監督中心主義作品」です。宮崎駿監督、細田守監督、原恵一監督らの作品がそうですね。神山健治監督も次世代を担う監督として、神山健治だったら必ず観たいと思わせるプロジェクトを、常につくってゆかなければならない。そういう考えもあって、神山さんとは10年後はこうする、20年後はこうしよう……なんていう話をよくします。

――石井さんにとってプロデューサーの概念とはどういったものでしょうか?

石井:
僕にとってプロデューサーは鈴木敏夫さんだけなんですよ。編集者時代から宮崎監督と寝食を共にして、原作を作り、現場を立ち上げ資金を調達し作品を作って、宣伝して、スタジオの運営までしている。鈴木敏夫さんこそが、僕の目指す唯一のプロデューサー像です。

――では石井さんも神山監督の全てをプロデュースしていく姿勢ということですか?

石井:
そうですね。真似しています。

――鈴木さんのすごさって何なんでしょうか?

石井:
世の中的には人を巻き込む才能、作家をコントロールし発展させていく才能、宣伝の神様……なんて言われていますね。全部正しいんですが、僕が近くで見ていて一番感じたのは誰よりも考えているということですね。一見、直感で動いているように見えるんですが、思考が早すぎてそう見えるだけなんです。そして更に宮崎駿監督は鈴木さんの上をいってしまうんですよ。この二人の脳みその回転率はすごいと思いましたね。でも、その感覚は神山監督と出会ったときもありました。あ、この人は宮崎さんと鈴木さんみたいだ、と。

 

鈴木敏夫が語る石井朋彦プロデューサー

4年ほど前、「ジブリ汗まみれ」に石井朋彦さんがゲスト出演した際に、鈴木さんがジブリ時代の石井朋彦さんの話を少しだけ語っています。
その思い出話の部分だけ、文字に起こしました。

鈴木:
石井は、ぼくのこといちばんよく知ってるんですよ。もう嫌になるくらい知ってますよ。
石井とおれが出会ったのが……。

石井:
21歳くらいです。

鈴木:
ある事情があって、ぼくが預かったんですよ。ある事情、言って良いのかな(笑)。
石井は制作だったんですよ。

石井:
堕ちこぼれ制作だったんです(笑)。

鈴木:
30歳にしてプロデューサーやってるくらいだから、当時から生意気なんですよ。
協調性がなくて、みんなと全然上手くいかなくてね。
それで、ある日ね、高橋ってのがぼくのとこに、「石井、辞めさせようと思うんですけど」って言いに来たんですよ。「なんで?」って言ったら、「誰とも上手くいかない」と。それで「鈴木さん、預かります?」って言うんですよ。で、「鈴木さんが預かってくれるなら良いんですけど、預かってくれないならクビにします」って(笑)。

石井:
ハハハハハ。

鈴木:
生意気盛りで生意気だったけれど、見込みがあったんですよね。それで、四六時中いろんなことで付き合うことになって。いろいろやっていって、『ゲド戦記』まで一緒にやって。それで、今の押井さんのスタジオに……。

石井:
差し出された(笑)。

鈴木:
ちょうど押井さんが、そういう人がいなくて困ってたから。
今度の『スカイ・クロラ』は、石井が行ったことによって、相談するわけだから。これは大きいですよ。だから、今までの押井作品とは一味違う。
石井と押井さんは合うって思ってたんですよ。今まで、押井さんの前に、そういう人が誰もいなかったから。
だからね、ポニョをやるか、押井さんをやるかってとき、ぼくは、そういうときひどいから「押井守のとこ行っちゃえー」って(笑)。

石井:
今となっては、ほんとうに感謝ですよ(笑)。