以前、日本テレビの番組「iCon」に、ジブリの鈴木敏夫プロデューサーと川上量生さんが出演したことがあるんですが、いまではこの放送は見れないと思うので、文字起こししました。
番組ホストは、日本テレビ・プロデューサー土屋さん。2011年の放送です。
人見知りの宮崎監督が、川上さんを警戒していたという話は、なんだか目に浮かぶ光景です。



宮崎駿と川上量生の出会い

土屋:
このツーショットは、もう慣れているというか。

鈴木:
かれこれ、一年。

土屋:
いわば映像コンテンツのなかの世界のジブリは、僕の中では一番こっち側で、川上さんがやってるドワンゴは一番こっちにいる感じで。

鈴木:
あぁ、対極。

川上:
対極な感じはしますよね。

鈴木:
そうなんだ。

土屋:
川上さんは納得されて、鈴木さんは「そうなんだ」って。
その辺の感じ方も、すでに対極みたいな感じで(笑)。

川上さんは、鈴木さんの隣に座るようになった切欠っていうのは何なんですか?

川上:
鈴木さんのラジオ番組に、ちょうど一年くらい前に出させていただいて。

鈴木:
あのね、僕の知り合いの人が連れてきちゃったんですよ。
で、紹介したいって言われてねぇ。嫌だったんですよ。
だって、会長でしょ。だからね、こんな服(背広にネクタイ)の人だと思ってたんですよ。
そしたら、これじゃないですか(笑)。

僕、第一声は未だによく覚えているんですけど、「会長なのに、こんな格好なの?」っていうのが、僕の第一声でした。
それで、いろいろ喋っていたら、「ジブリで働かせてください」って。

土屋:
本番中に?

川上:
本番中っていうか、本番が始まったのが分からなかったんですよ。キューもなにもないから(笑)。

土屋:
川上さんは、何のためジブリに?

川上:
鈴木さんには興味があったんですよ。
それは、今からすると勘違いだったんですけど(笑)。
何年か前に、ネットで鈴木さんが喋った言葉っていうのが流行っていたことがあったんですよ。流出したみたいな感じで。
ジブリの中のことに関しても、自分のところをこんなふうに言っていいのかっていうことまで言っていて、凄い面白い人だなと思ったんですよね。こんなにぶっちゃけて。
実はそれ、鈴木さんの言葉じゃなくって、岡田斗司夫さんって人が書いた鈴木さんへの悪口だったんですよ(笑)。

あくまで悪口だったんですけど、会ったときに違和感がなかったんですよね。
想像どおりの人だー! とか思って(笑)。

土屋:
それで、ジブリに入れてくださいって言ったのはいつごろですか?

川上:
その場ですよ。僕はそういう衝動で物事を決めるので。

土屋:
で、それを聞いた鈴木さんは?

鈴木:
たぶんね、羨ましかった。
聞いた瞬間にね、この人は何を言っても来るんだろうなぁ、と思ったし。
だって、僕だってそうだもん。宮崎駿とか高畑勲を取材してて、気がついたら向こう側に行っちゃったんですから。

だからね、僕はほんとうのことを言うと、最初に川上さんに言ったようが気がするんだけれど、ジブリはだいぶ高年齢化しているんでね、今後この人がジブリをやってくれないかなと思ったんですよ。
それは、ちゃんとした答をまだ貰ってませんけど。いつか、そうなるだろうなと思ってるんですよ、僕は。

川上:
なんでこういう場所で、そこを埋めようとするんですか(笑)。

土屋:
ある意味、なぎ倒し中みたいな(笑)。
歴史的に見ると、非常に歴史的な瞬間が記録されている可能性がありますけども(笑)。

でもね、端から見て、穿った見方をするとですよ、ドワンゴの川上さんが、みんなが欲しがっているコンテンツとしてのジブリに単身飛び込んで行って、それをネット上に出そうとしている、っていうふうに穿った見方をした人はかなりいると思いますよ。

川上:
そうでしょうね。そうだと思いますよ。

鈴木:
あ、そんなこと考えるんだ。僕、欠片も考えなかったよ(笑)。

僕はね、ラジオの本番中だから、多少はサービスしなきゃいけないじゃないですか。
だから、『コクリコ』の映画をニコ動でも協力してほしいって、心にもないこと言ったんです。
だって、僕はよく分かってないんだもん(笑)。
そしたらね、その応えが良かったんですよ。「止めたほうがいい」って。

川上:
あれ実は、瞬間的にね、二つ計算をしたんですよ。
一つは、ジブリにとって、ほんとうに良いプロモーションをニコ動を使ってできるかっていうと、プラスになる方法
もあるかもしれないけども、危険も凄くあるっていうのが一つと、もう一つはジブリに居たかったんで、そんなことやっちゃって、上手くいかなくなったら居られなくなるじゃないですか(笑)。

ITの世界っていうのは、コンテンツがみんな借り物なんですけど、普通の会社っていうのは完全に借りるだけですよね。
うちの会社は、それに必ず味つけをしようっていうのをやっていたんですよ。制作みたいなことは、やりたいと思ってきたし、多少はやってきたというふうには思っているんですね。

鈴木:
作りたい人なんですよ。
喋っててすぐに分かったのはね、作り手の側に立つ、そしてその気分が分かる人。そういう人なんですよね。

だから、実際に『コクリコ』って映画を作っているときにね、最後の最後になって、もう終わりに向かってやっていこうってときにね、疑問を提出するんですよ。「何か足りない」って。
要するに、若い人の青春は描かれた。しかし、あのおじさんたちの青春は台詞だけだ、と。惜しいよねって。
それで、慌てて吾朗がね、間髪入れず「分かりました」って。三人の写真が何回も出てくる、そのシーンを、つまり写真をどうやって撮ったか、これを入れますかって。
川上さんのお陰で、あのシーンが出来たんですよ。
だって、「足りない」って言ったんだもん。

土屋:
宮崎駿さんが、川上さんの前歴も知ってね、喋ってもらえてるのかどうか(笑)。

鈴木:
大変ですよ、もう。

川上:
ジブリに入った日に紹介されて。
挨拶しに行ったら、いきなり「こんなとこに、何しに来たんだ!」って(笑)。

土屋:
やっぱり警戒してたんだ?

鈴木:
もう、矛盾ですよね。
気になる、喋りたい。でも、あいつはITだ、とかね(笑)。

土屋:
インターネットの回し者だ(笑)。

鈴木:
みんなが仲良くしていることも、なんとなく知っているわけですよ(笑)。
それでね、いつ喋るのかな、と思ってね。僕もね、何も言わないわけですよ、川上さんについて。宮さんも、何も聞いてこない。

とある日、宮崎駿がいつも通過していたのが、キュッとカーブを切って、川上さんの座ってる席に直進!

いきなり! 「今、世界の経済はどうなってますか?」って(笑)。
どわーー、っと二人で喋りまくったんです。
で、気がついたら、一緒に旅行する仲になっちゃったんです。

土屋:
どんだけ仲間になっちゃってんですか(笑)。

 

ジブリのデジタルについて

鈴木:
ジブリが拒絶反応があるっていうのは、僕は嘘だって気がするんですよね。
いろんな理屈はくっつけるけどね、基本的にはね、自分で扱えるかどうか。
なんてったって、宮さんも71歳ですからね。
なかなか、コンピュータとの出会いは、不幸でしたよね。
もう少し若く出会っていれば。そうすれば好きになってたんですよ。

今アニメーション界でね、大きな事件があって。
トゥーンシェーダってソフトが出てきて。なにかって言うとね、要するに手で描かなくても、セル画風のアニメーションが作れるっていう、凄いのが出てきたんですよ。
今、これを巡って、業界は大騒ぎなんですよ。要するに、手で描くか、コンピュータで描くか。
そういうことに関して、宮崎駿が井の中の蛙になるとよくないんでね、見せたわけですよ。
見終わった瞬間、なんて言ったか。「下手だ」って。
つまり、上手だったら使いたいんですよ。

川上:
そういう意味では、ジブリっていうのは昔かたぎの職人で、やり方を一切変えないみたいな、イメージはあるんですけど、全然違うんですよ。

 

ジブリのプロモーション

土屋:
川上さんがジブリで、インターネット的プロモーションをすることもあるじゃないですか。
ニコ動でもやったんですよね?

鈴木:
ありましたよ。ジブリから生中継したんですよ。それで川上さんと、吾朗君ってことで生中継だったんですけど。その吾朗の座る席にね、なんと番組始まった瞬間、宮崎駿がいたんですよ。

川上:
5分前くらいに鈴木さんが連れてきて(笑)。

鈴木:
ひどいんですよ。一個だけ質問してね、「はい、じゃあどうも、ありがとうございましたぁ」ってね、追い出しちゃったんですよ。もっと喋りたいのに(笑)。

川上:
僕は基本的に、ほんとうにニコ動でのプロモーションはやりたくなかったんですよ。保身に走ったんで(笑)。
だから、僕は座った瞬間に、話が切れたら追い出すことしか考えてなかったんです(笑)。

鈴木:
それで退席した後にね、ニコ動の画面を宮さんが見るわけですよ。
見ている人がこうやってね、いろんなふうに意見言ってくるんですよ、って言ったらね、第一声、「これ全部読まなきゃいけないの!?」って(笑)。
それから、もう宮崎駿はもの凄く詳しいですよ、ニコ動に。だいたい、あの人はね、関係した会社に関して詳しいんですよ。日本テレビしか見ないしね(笑)。

土屋:
視野が狭いんだか広いんだか、よく分からないですね(笑)。
そういう意味では、川上さんを通じて、ニコ動なりインターネットなり(に触れて)、次の作品に対しての影響もかなりある可能性がありますね。

鈴木:
川上さんの存在そのものがそうですよ。

土屋:
川上さんが、この一年で感じたこととか、ジブリの将来はインターネット的には、こういうふうにしたほうが良いとかありますか?

川上:
ジブリに来て、日本の映画とかアニメとか、そういうのを含めたコンテンツ産業が、ネットとどう付き合っていけば良いのかとか考えるようになりましたよね。

土屋:
じゃあ、ジブリのネット配信とかいうことも、今後ありそうなのか、ないのか。

鈴木:
僕もね、配信っていうことには二つの立場があって。
映画ファンとしては、配信はどんどん積極的にやってもらいたい。でも、今度ジブリの側に立つと、どうなんだろうっていうのがあってね。
例えば、ジブリの作品ってね、テレビ放映ですら日テレでしかやらないわけですよ。
なんか、一個だけでやってるのが良いかなあ、とか思ってて。

川上:
僕はあまり、そこを考えないほうが良いと思いますけどね。
今、パッケージのほうが儲かるわけですよね。それで、ネットのほうは儲からないじゃないですか。
そしたら、儲かるものから、儲からないほうへ、急いで行くっていうのは、ビジネス的に間違いだと思うんですよね。
だから、ネットに対して進まないコンテンツ業界に、ネットの人たちは批判していますけど、僕はあれは間違いだと思うんですよ。
答が分からないのに進むのは、やっぱりそれは無謀ですよ。
現時点だと、ネット配信って主力のビジネスとしてやるべきじゃないと思うんですよね。もっとニッチなことですよね。

土屋:
僕が川上さんに言うのはおかしいですけど、昨日の(ドワンゴの)発表だと『ハリーポッター』なんかをコメントしながら見るっていうのは、新しい映画の見方なんじゃないか、っていうことをドワンゴ側の方が喋ってましたけど、それは違う?

川上:
いや、そんなことないです。
あれは、なんでかって言ったら、いまでもレンタルビジネスってあるわけですよね。
昨日の発表っていうのはね、そのレンタルと同時に配信を開始するっていうのは始めていて、それをニコ動も始めますっていう話なんですよ。
そのモデルっていうのは、レンタルするか、ネットで配信するかの違いだけなので、コンテンツ業界の取り分的にはネット配信のほうが多いわけですよ。
だったら、そちらのほうは、コンテンツ業界にとってもプラスになる話だと思うんですよね。
僕は、どっちかっていうと、パッケージだとビジネスが整理すしないようなものをネットにできるから、そっちのうで行くべきだ、って話をこれ(『次郎長三国志』のパッケージを取り出す)ではしたんです。

『次郎長三国志』は昭和20年代の映画なんですよね。
それのパッケージを作りたいんだけど、なんとか売れないか、ってことを鈴木さんに言われたんですよ。
で、僕も一週間くらい考えたんだけど、「売れるわけねぇ!」って結論をして(笑)。
僕はね、ネット配信をするべきだって話は、それまで鈴木さんに一切しなかったんだけれども、これはネット配信したほうが良いんじゃないか、ってことを進言したわけですよ。
なぜかと言うと、鈴木さんはこれを今の時代の人に見てもらいたいんでしょ?
今の時代の人に見てもらいたいんだったら、これ売ったって誰も買わないから、ネットで配信したほうが今の時代の人に見てもらえますよ、知ってもらえますよ。そのための配信のお金だったらニコ動で出しても良いですから、って始めてニコ動を提案したんですよ。
そしたら、「パッケージは俺が欲しいんだ!」とか言い出して(笑)。

土屋:
本音を言ったわけですね(笑)。

鈴木:
この人もそう。尾田栄一郎って。これ(パッケージイラスト)彼が描いたんだもん。多くの人に見てもらいたいって言って。

土屋:
それも口説いたんですね?

鈴木:
口説いたわけじゃない。実を言うと、『ワンピース』の第一巻読んでね、「あれ」っと思ったんですよ。
それでね、次に会ったとき、「尾田さん、あれ、『ワンピース』って『次郎長三国』なの?」って言ったら、顔色がガラっと変わって「え、鈴木さん」ってことになって、一気にふたりの距離が短くなったんです。それで、ふたりでね「パッケージ欲しいよね」ってことになって。
で、とある日ね、東宝の社長に、「これ、パッケージになんでやらないんですか?」って言ったらね、「俺も欲しいよ」って言い出して(笑)。それぐらい良い作品なんですよ、これ。

川上:
僕はそれに、ネット配信したほうが、みんなに見てもらえますよ。って言ったら、もうみんなから「俺が欲しいんだ」って言って説教されたんですよ(笑)。

こんな会議ばっかりなんですよね。これをどやって売るのか、みたいな会議と、『コクリコ坂から』をどうやってプロモーションをするかの会議が、だいたい同じぐらいの比率なんですよね。他に、もっとやることあるだろう!(笑)

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