ハウルの動く城宮崎駿監督は、2013年に引退会見を行なったとき、最も自分のなかにトゲが残っている作品は『ハウルの動く城』だったと語っています。
『ハウル』は、それまでの宮崎作品と比較して、だいぶ起承転結の構成を壊していたのと、物語の説明を除いた作りになっており、難解という声がありました。



現在は、また受け止められ方が違う作品かもしれませんが、当時は辛辣な意見も多かった作品です。

あの当時の宮崎駿監督は、メディアに出ることもなく、作品を語ることは一切ありませんでした。
ガイドブックのロマンアルバムでさえ、インタビューは行なわれていません。

宮崎監督は『ハウルの動く城』をどのように受け止めていたのでしょうか。
その答えは、雑誌「Cut」の2008年9月号と2009年12月号のインタビューで語られました。現在は、『続・風の帰る場所』に収録されています。

殴りに行こうかと思って

宮崎:
『ハウル』の評価には怒ってますよ、ものすごく! 殴りにいこうかと何度も思って(笑)。
説明するための映画は作らないと決めた以上、俺は説明しない!っていうことでやったら、やっぱり半分ぐらいの人はわからないみたいなんですよね。これはきわめて不愉快な現実でしたね。

これは前から感じてたんですけど、理屈が通ってるのが好きだっていう人たちはいるんですよ。その人たちは映画を観なくてもいいと思うんだけどね、僕は(笑)。と言ってもしょうがないんで。お客さんがお金を払ってくれるんですから。

僕らはエンターテインメントで、過半数のお客さんが満足してくれるものを作んなきゃいけないという責務があってやってることです。喧嘩を売ろうと思って作ってるわけじゃないですから、あんまり置いてけぼりにしちゃうのはいけない。
『ハウル』の場合はモチーフに魅力があり、同時にそれが罠だったんです。どんどん年寄りになっていくお客さんたちに「若返ることが素敵なことだ」って言えるのか。年をとってもイイジャンとか、若いことだけがいいんじゃないとか、やっぱやりたいじゃないですか。そこだけは曲げたくなかったらから話がややこしくなりました。

『ハウル』は、ほんとに骨の髄まで考えた末の作品ですからねえ。「考えりゃいいってもんじゃない」っていうのも鈴木さんに言われたけど。「そりゃ考えたことのない奴が言ってることだ!」って言いたくなるぐらいね。「俺と同じぐらい考えてみろ!」とかね(笑)。そのぐらい考えました。

反応は極端なものばかり。散々な経験だった

宮崎:
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(原作者)……ぼくは彼女の罠にはまりましたね。 彼女のストーリーは、女性読者にとってはすごくリアリティのあるものなんです。 ですが、彼女自身は世界の仕組みがどうなっているのかということに全然関心がない。
それに、小説に登場する男性はみんな少し悲しげで、静かに佇んでいて……要するに、まるで全員が彼女の理想の夫のようなんです(笑)。

使われる魔法にも何のルールもないですし、そうするとまあ、収拾がつかなくなるわけです。
でもぼくは、そのルールを逐一説明するような映画は作りたくなかった。それは、ゲームを作るようなものですから。
だから、ぼくは魔法の理屈を説明しない映画を作ったんですが……そしたらぼくも途中で迷子になってしまった(笑)

なぜかはわからないんですが、この映画に対する反応は極端なものばかりでしたね。
心の底から好きだと言う人と、まったく理解できなかったと言う人がいました。散々な経験でしたよ(笑)。

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