ジブリ汗まみれ公開収録『杉原千畝』渋谷の「HMV&BOOKS」オープニングイベントとして行なわれた「ジブリ汗まみれ公開収録」に行ってきました。
整理券が先着50名と少ないこともあって、もしかしたら聞けないことも覚悟していましたが、無事観覧することができました。今回の収録は、映画『杉原千畝 スギハラチウネ』について語るというもの。



登壇者は、鈴木敏夫さんをはじめ、エッセイストの犬山紙子さんと、ジブリではお馴染みの奥田誠治さん。
奥田さんは、今回の映画でエグゼクティブ・プロデューサーを務めているそうです。

そして、犬山紙子さんは、どういった経緯で呼ばれたかというと、奥田さんの奥さまと同郷のよしみでお声がかかった、と鈴木さんが冗談っぽく言ってました。冗談でしょう、きっと。
犬山さんは、奥田さんが携わった番組に、よく出演しているそうです。

ジブリ汗まみれ公開収録『杉原千畝』

鈴木さんは、例によって作務衣姿で登場したと思ったら、席に着くなりすぐさまあぐらを組んでいました。鈴木さんスタイルが確立しています。

日本版『シンドラーのリスト』の杉原千畝。

12月5日に公開される映画『杉原千畝』は、実話をもとにした作品。第二次世界大戦下のヨーロッパで、日本政府に背きながら、ユダヤ難民を救うために、ヴィザを発給し続けた日本人外交官の話です。杉原さんは、6000人ものユダヤ難民を救っており、日本版「シンドラー」とも呼ばれています。

この映画をいちばん作りたがっていたのが奥田さんだったそうです。杉原千畝を調べれば調べるほど面白いことがわかり、彼の功績を知ってもらいたいという想いもあり、日本テレビのドキュメンタリーやドラマで紹介していくうちに、どんどん映画を作りたい気持ちが湧いてきたと言います。

日本の戦争を題材にした映画は、山本五十六や東郷平八郎などを主人公にした上から目線の作品はあったけれど、中間管理職を主人公にした作品は少なかった。杉原千畝は6000人ものユダヤ難民を救い、難民がどういった経路で日本に来たのか、そこまで描きたかった。奥田さんは、「その気持ちが出発点となり、この映画の企画がスタートした」と熱い思いを語ります。

犬山紙子さんは、出来上がった映画をこの対談の当日に観てきた言うと、鈴木さんからすかさず、「どさくさ紛れにやってますね(笑)」とツッコミが。犬山さんは、「いやいや、ホヤホヤの温かいうちに喋りたくて!」とアタフタ。

今回の対談で、犬山さんと奥田さんは、鈴木さんから終始いじられていました。

犬山さんは同作で、千畝を支える幸子夫人を、共感できないほどの“聖人”と感心。ヴィザを発給し続ければ、自分たちの命も危ない。そうなったときに、「私だったら自分の命を優先にする。それなのに、旦那の背中を押すことができるのは凄い。自分にはできない」とコメント。

すると鈴木さんから、「あなたの結婚生活に、なにか問題があるんじゃないですか」とツッコミが。「いやいや、そんなことないです!」と再びアタフタする犬山さん。

千畝がヴィザを発給しつづけた理由。

鈴木さんは、この映画を観て、杉原千畝がヴィザを発給し続けた理由を考えたと言います。
この当時は、三国同盟として、日本とドイツとイタリアの条約があり、自由の少ない時代。政府に背けば、自分を含めて家族の命も危なくなる。

ヴィザを発給するために行なったサインの数は2000余り。膨大な時間を要します。その間に、「彼に迷いは無かったのか? 彼は何がほしかったのか?」鈴木さんは、そのことをずいぶん考えたと語ります。
最初は、千畝にも逡巡があったけれど、あるときに決断をする。その決断するときに大きな存在となったのが、奥さまの幸子さんだった。「この奥さまは、犬山さんより立派な方だったんですよ」と笑顔の鈴木さん。

「ぐうの音も出ません(笑)」と犬山さん。

司会の方から、「鈴木さんも、千畝にはなれない、と思われたんですか?」と問われると、「ぼくは、すぐ千畝みたいになっちゃいますよ」と自信ありげな表情。

「まあ、なってくださいよ」と奥田さん。

人間がなにか行動を起こすには、何らかの対価がある。千畝が欲しかったものは、何だったのか。鈴木さんは、ずっとそのことを問題提起していました。鈴木さんによる答えも述べていましたが、放送前なので、ここでは割愛しておきます。

戦争映画は、勝った国がよく作る。
日本は、主人公になる人物が少ない。

鈴木さんも映画人として、戦争を題材にした映画のことは、よく考えていたそうです。
アメリカのように、戦争に勝った国は、戦争映画をよく作ると指摘。しかし、負けた側はどうなのか。
フランスは連合国として勝つけれど、ドイツから徹底的にやっつけられている。ところが、フランスでは戦争映画がよく作られている。それは、レジスタンスが活躍していたため。そういう人たちがいると、映画が作りやすくなると言います。

しかし、日本にはそういう人もいないので、戦争映画が作りにくい。日清・日露の、大昔の戦争で勝利した英雄を主人公にするしかない。太平洋の負け戦だと、せいぜい山本五十六くらいになる。滅びの美学で映画にするしかない。
そのなかで、杉原千畝という人は、極めて稀な主人公になりやすい人物。「奥田さんの目のつけどころが素晴らしい」と鈴木さんは語ります。

向き合うと欠点が見える

「年を重ねたせいか、よく相談を受ける」という鈴木さん。その内容は、ほとんどが離婚に関することばかり。原因をまとめてみると、だいたい一つになると言います。女性は、男性に対して「向き合って話そう」となる。しかし、向き合えば、相手の欠点が見えてくる。「男女は向き合ったらいけない」と鈴木さん。「では、どうしたら良いですか?」と犬山さんが訪ねると、「同じ未来を見なさい」と回答。まるで、サン=テグジュペリのよう。
「千畝の奥さん幸子夫人は、彼と同じ未来を見ていた」と鈴木さんは語ります。「奥さまが素晴らしい映画です。犬山さんとは違います(笑)」と、最後までいじることを忘れない鈴木さんなのでした。

鈴木さんは、ノリのトークになっていて、まだまだ面白い話が聞けそうでしたけど、40分ほどで終了。今回の収録は、11月29日の「ジブリ汗まみれ」で早速放送とのこと。収録でいじり倒されていた犬山さんが、放送ではどうなっているでしょうか。

映画『杉原千畝 スギハラチウネ』は、12月5日より全国公開されます。


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