耳を澄ませば『耳をすませば』の制作にあたって、本作で企画・脚本・絵コンテを務めた宮崎駿さんが掲げた目的の1つに、「都会生まれの人間にとっての“ふるさと”を描く」というものがありました。
原作では、雫が住む場所は細部まで描かれていませんが、映画では京王線の聖蹟桜ヶ丘がモデルとなっています。



そのため、雫の住む団地やコンビニ、駅前の風景など、きわめて現実の風景と近い場面が多くみられます。
そして、第二の原作とも言われるのが、ジョン・デンバーが作詞作曲した、『カントリー・ロード(Take Me Home, Conuntry Roads)』です。宮崎さんは、この曲を繰り返し聴くうちに、「今の中学生にとって故郷とはなにか」と考えるようになったそうです。

この曲は、映画の冒頭でオリビア・ニュートン・ジョンが歌うバージョンで流れます。
そして、物語のなかで雫もこの歌の訳詞に取り組むという、構成になっています。

耳をすませば

この映画にとって、とても大事な曲となった「カントリー・ロード」の訳詞は、当初は宮崎さんが務めるはずでした。
しかし、最終的には、鈴木敏夫さんの娘、鈴木麻実子さんが行なうことになります。そこには、どんな理由があったのでしょうか。
近藤喜文監督は、主題歌の歌詞が決まるまでについて、このように語っています。

最初の設計と違うけれど、一貫性が出来た

近藤:
「カントリーロード」が第二の原作と言ってるんですけど、あの歌も田舎に帰りたい、田舎はいい所だという歌ですよね。日本のお父さんの世代ですと、その世代の受け止め方がありますよ。そこから子供の世代になった時、ほんとうの田舎を知らないからってこの映画のなかでも言わせているんですけれど。

(略)

宮崎さんが、雫と姉さんと二人で部屋を使っていて、半分から見える世界が何の変哲もないけれどここがあなたと出会ってから私の故郷になりますっていう様な感じの歌を作りたいと苦労してたんですが、どうもしっくりこなくてどうしようかって言った時に、そういえば鈴木プロデューサーに娘がいるじゃないかって話になってやっぱりそういう世代の人に書いてもらったほうがいいだろうと。実際書いてもらったらこれが良かったんですね。

(略)

それで一人で生きると何も持たず家を飛び出したと。飛び出して頑張ってみたけれどやっぱり恋しいし帰りたいとも思うけれど、そうやって飛び出して来たから帰れない、なんていう思いを歌にしてるんです。それが丁度イタリアに旅立っていく少年の心情にぴったりと符合したことによって、あっ、これでいけるんじゃないかって話になって、急遽最初の設計と違うけれどこれにしましょうと。これで一貫性が出来た気がしたんです。当初の計画がいい意味でいろいろな人と出会える幸運に作用したと思います。

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