鈴木敏夫現在、ネットニュースに“ジブリ解散”の記事が出て、騒がせているようですね。
「楽天woman」から出た記事が発端となっているようですが、その記事自体は裏どりされたものではないと思います。
以前、「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」のなかで、鈴木さんが今後のジブリについて語った放送があったのですが、おそらく、その内容を面白がって“解散”に結び付けたのではないでしょうか。



スタジオジブリは『魔女の宅急便』以来、約20年間にわたって雇用という形をとって作品を作ってきました。
つまり、『となりのトトロ』までは、スタッフを社員という形では雇っておらず、企画ごとに招集をかける、フリーの集まりだったわけですね。

今回、宮崎駿監督が引退するにあたって、雇用形態の維持が困難になったことから、『マーニー』以後は昔のスタジオジブリに戻る、という話を鈴木さんはしています。

今後、作品を作っていくのか、それともこれっきりで終わってしまうのか、それは『思い出のマーニー』の結果に委ねられているので、まだ白紙のようです。

以下、「ジブリ汗まみれ」の文字起こしです。

 

今後のスタジオジブリについて

鈴木:
宮さんのために作ったジブリでしたからね、宮さんが作るのやめたら「じゃあ、ジブリの現場どうするの?」っていう。
そうすると、ぼくとしてはですね、いろいろ考えたんですけどね、要するにスタッフを抱えて、ジブリは作品を作ってきたわけですけど、それに一回終止符を打ったらいいのかなと。
だから、仮に新たに作るにしても、元のジブリに戻って、企画が決まったら、その段階で人を集めて、それで作る。それでもいいじゃないかと。
だとしたら、このかん一緒に働いてきてくれた人には申し訳ないけれど、このまま闇雲にいろんな人を監督にして、それで作っていくっていうのは、やっぱり問題があると思ったんで、それをやったほうがいいって。
これはね、実を言うと、宮さんもどこかでそういうことを思ってて、それでふたりで話し合ったときにね、宮さんも「そのほうがいい」って。

(略)

才能ある人って、最初から才能あるんですよね。これはもう、残酷な話ですけど。
だけど、映画作りなんてね、ほかの仕事もそうでしょうけど、両方ありますよね。才能の部分で補う人と、そうじゃなくて誠実さで積み重ねるっていう仕事? で、量としてはね、誠実さのほうが多く必要ですからね。
で、そこで、いろいろ計算を重ねてもね、あるところまで到達できるかっていったら、これはできないですよね。才能の開花には繋がらない。これは、やってきてつくづくそう思いますよね。
やっぱり、上手な人は、最初から上手だしね。ほとんどの人は、才能ないわけですから。だとしたら、そこらへんは、ちゃんと明快に見極めたほうがいいに決まってると、ぼくは思ってますからね。

――つまり、ジブリというのは町工場だということを言ってきたわけですよね。そこには、安定した雇用も含めて、それが無理があったということになるのか、それとも、これを経たうえで……。

鈴木:
雇用を始めたのは10年経ってないときですから、20年間それをちゃんとやれたっていうのはね、ある実績としては、ぼくは成功したと思ってますけどね。
というのは、研修制度をやって、そこから巣立ったいろんなアニメーターいますからね。
それで、アニメーション界のいろんなところで、ジブリ辞めたあと、その人たち大活躍ですから。ある役割は果たしたと、ぼくは思ってますね。

――わかりました。これからは、どうするんですか? ジブリとしてはもう人は雇わない?

鈴木:
そうですね。だから、まあ、現場の、映画の作り方を変えるということですから。この『マーニー』までは、今まで通りやりますけれど。
このあいだ、『マーニー』の話をしたかと思うんですけど、『マーニー』はそういうことで現有勢力に、『かぐや』と『エヴァ』の人たちが集まって、それで考えられないような強力なスタッフで作ってる?
それで、しばらく間をおいて、また誰かが「やりたい」って言い出したら、その人たちに声かけて、それでもう一回作るっていうことは出来ますよね。
それは、具体的には『かぐや』のプロデューサーやった西村義明、彼ですよね。彼とは、そんな話もしてますしね。
まあ、ほんと偶然とはいえ、麻呂みたいな才能を生み出したことは、やっぱり大きかったと思いますよね。ほんと偶然ですけどね。だって、ジョン・ラセターが認めたわけですからね。

(略)

良くも悪くも、宮さんの才能によって、良い作品ができる会社だったんでね。その支柱を失うわけだから、(システムを)変えざるを得ないですよね。

――そうすると、現場のアニメーターとか、いっぱいいらっしゃるわけだから、そういう方と映画作りはこれから続くわけでしょ?

鈴木:
やろうと思えばね。
だけど、ぼくとしては、中心になる監督が大事ですからね。

――そうすると、『マーニー』のあとは、特にどういうペースで作っていくかとか、そういうのはないんですか?

鈴木:
今のところないですね。とにかくね、『マーニー』がどうなるかっていうのは、誰にもまだ分からないですよね。
ぼくはね、心がけてきたこととして――宮さんはね5年計画とか、そういうこと言い出したわけですけれど、ぼくはそんなこと一回も考えたことないんですよ。
なんでかっていったら、いちスタジオで、いちスタッフで、いち作品作ってきたわけでしょ。そしたら、その作品が、上手くいくかどうかで会社の母体が揺らぐわけですよ。そうすると、やっぱり一本ずつの勝負?
それでいうとね、今回だって、この『マーニー』がどういう結果をもたらすのか。そうすると、当然、まず内容がいまのお客さんが望んでいるものになるのかどうなのか。これは、やってみなきゃ分からないですよね。まだ出来てないんだから。
で、今度は、お客さんに訴えたときに、どういうお客さんの反応があるか。これはね、やっぱり次を考えるには、その結果を見ないといけない。
だから、まあ、しばらく、静観をしなきゃいけない。とにかく、『マーニー』の結果を見て、もしかしたら、すぐに次の企画を考えて、やるかもしれないし。それから、当面、作らないかもしれない。そういうことですよね。

――そうすると、鈴木さんの立場としては、現在進行形でどうなるかわからん、って感じなんですか?

鈴木:
そうです。ほんとにそうです。
宮さんなんて、酷い冗談言いますよね。「ぼくは引退したからいいけど、鈴木さんは大変だね」って。
ほんと、いい加減にしてほしいですよ(笑)。

(略)

高畑・宮崎がいなくなったけれど、若手である程度の作品は作れる。それで、その人たちが成長するのを待ちましょう、っていうのは、ぼく違うような気がしてるんですよ。
やっぱりね、才能あるっていうのは、若いときからあるんですよ。そしたら、それを持ってる人がいるかいないか。それで、麻呂にね、仮にその才能があるとしたら、その麻呂と一緒にやってくのは、ぼくじゃないだろうって、どっかで思ってますよね。宣伝はつけましたけどね。

『風立ちぬ』と『かぐや姫』に関して、ぼくが言っておきたいことっていうのは、要するに、とことん二人に好きなものを作ってもらう?
ぼくは、お金は用意したし、それから期間も用意しましたよね。それで、高畑さんにも、宮さんにも、いろいろ頑張ってもらって、世話にもなったけれど、これでチャラだよねってのは、どこかにありますよね。

あんまりお金のことは言いたくないですけど、2本で100億円ですからね。前代未聞なんですよ、やっぱり。さすがに、関係各社もみんな青くなったですよね。
宮さんも、思いの丈をすべて注ぎ込んで作っただろうし、高畑さんもそれをやった。これでまだ、やりたりないって言うなら、「ちょっと、いい加減にしてくださいよ」ってなりますよね(笑)。

 

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“好きなものを好きなように”作りつづけ、アニメーション映画制作の最前線を駆け抜けてきたジブリも三〇年。高畑勲監督の一四年ぶりの新作公開、宮崎駿監督の「引退宣言」と大きな転換点を迎えた今、プロデューサー・鈴木敏夫が語ることとは?
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