借りぐらしのアリエッティジブリ作品のキャラクターというと、皆さんご存知のとおり、どのキャラクターもだいたい同じような顔をしています。特に、主人公クラスのメインキャラは、ほんとうによく似ています。
顔がそっくりとなると、服装やヘアスタイル、装飾品などが重要になってきます。



例えば、『魔女の宅急便』でいうと、キキのキャラクターを決めあぐねていた宮崎駿監督は、大きなリボンをつけることを思いついて、キャラクターとして成立させることができたと言います。

『借りぐらしのアリエッティ』においても、それは同様で、米林宏昌監督はアリエッティのキャラクター作りに苦戦したそうです。

米林監督は、『借りぐらしのアリエッティ』制作時のインタビューで、このように語っています。

頭に洗濯バサミをつけることで、アリエッティ象がスタートした

米林宏昌

米林:
まず、小さい人というのを、いかに絵物語というか、そういうものじゃなくて、リアリティを持って描くということが、課題だったんです。原作のそこが面白いんですけど、小人だからといって、特別な魔法を持っているとか、特別な能力を持っているとか、そういう人達じゃないんですね。サイズが10cmくらいの、小さいと言うだけで、いたって普通に生活している。
そういう人達を、いかにリアリティをもって想像できるかなと思って、いろいろ考えたんですけど、手の平の上に乗ってたら、温かいのかなあとか。小さい世界から、世界を見たら、どういうふうに見えるんだろうとか。
そういうイメージイラストを、最初のころにいろいろ描いたんですけど。そんな中でどうしても、アリエッティのキャラクターが、主役なんですけど、どういう子なのかっていうのが、なかなか掴めなくて、凄く苦労したんです。
キャラクターが、なかなか個性をもってこなかったんですけど、何かもうワンポイント付け足せば、上手くいくんじゃないかと思って、思いついたのが、頭に洗濯バサミをはさんで、髪の毛をアップにして留めているという。
この絵が描けたときに、「ああ、アリエッティがこれでいけるんじゃないか」と思って。それを宮崎さんに見せたときに、とても気に入ってくれて、これでいけるんじゃないかなと。
そこで初めて、アリエッティ像がようやくスタートしていけそうかな、というふうに思いました。そういう意味で、このデザインを思いついたときは、ひとつの大きい一歩だったんじゃないかなと思うんです。

キャラクターとして、いまひとつ弱さを感じていた米林監督ですが、アリエッティの頭に洗濯バサミをつけることで、ようやくキャラクターを成立させることができました。
『魔女の宅急便』でキキの頭にリボンをつけることを思いついた宮崎監督と、同じようなエピソードですね。

このアリエッティのキャラクターについては、宮崎監督はこのように話しています。同じく、『アリエッティ』製作時のインタビューです。

そんなのは、名作を作ってから言え

宮崎駿

宮崎:
作品の核を掴むっていうのはね……、洗濯バサミくらいで核を掴んだと思ったら甘いですよ。そんなのは、名作を作ってから言えば良いんですよ。今から言うことじゃない。洗濯バサミくらい、どうでもないですよね。そのくらいのことを、正直に話すところに、まだ一人前になっていない弱さがありますね。どこの馬の骨かもわからないし、お蔵入りになるかもしれないんだから、映画なんて。つまり、どこも公開を引き受けてくれないって可能性があるんですから、いつも。

だから、そうはさせまいと思って、プロデューサーの方はいろいろ覗いてるけど。だから、まだ、そんなこと総括するのは、早いですよ。洗濯バサミを付けたがために、ダメになるかもしれないんですから。まだ、何者にもなってないですよ。映画が出来上がって、それがどういうふうに出来上がるかによって、関わるんですよ、ほんとに。それは、とんでもないところに来て、彼も立ってるんですよ。一回(監督を)やってしまって、アニメーターとして、前のように気楽な存在に戻れるかっていったら、そう簡単に戻れませんからね。一回やっちゃうと。だから、まだまだ。自分で神話を作ろうなんて、洗濯バサミの神話なんて、ちゃんちゃらおかしいですよ。黙ってりゃ良いんですよ。「まだわかりません」って。緊張感足りないですよ、そんなの。ゴールじゃないんだから。

強烈な叱咤激励でした。何かを成す前に、多くを語るのはよしたほうが良いのかもしれませんね……。多くを語らず勤しみましょう。

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