説明不足から起きた、宮崎駿監督の怒り。

終らない人 宮崎駿ドキュメンタリー番組「終わらない人 宮崎駿」の中で、川上量生さんのドワンゴで研究している、AIが作ったゾンビのCGを宮崎駿監督に見せて、怒らせるというシーンが流れました。
身体を引きずりながら移動するCGに、宮崎監督は「生命に対する侮辱」と静かな怒りを表して、大きな話題となりました。



一連の問題は、川上さんのAIに対する説明不足が原因と思われますが、2ちゃんねるの元管理人で有名な、西村博之さんが事細かに解説しています。

ネットでは、追い打ちをしていると批判もあった、鈴木さんの「どこにたどり着きたいんですか?」という発言は、川上さんに対する助け船だったと受け取っています。

川上さんはメディアに出るのが嫌いな人

西村:
川上さん自身は、もう覚えてないかもしれないんですけど、川上さんってメディアに出るのが嫌いだったんですよ。
ぼくが知り合ったころ、ニコ動を始めたころなんですけど、川上さんってメディアに出なかったじゃないですか。なぜ出なかったか。昔、NHKかなにかで、「悪い会社がありますよ」って後に、川上さんの会社を続けて紹介されたみたいで。金髪の若造がやってる会社みたいな感じで、けっこうイメージ悪く取り上げられたらしいんですよ。で、メディアが信用できないから、「嫌いだ」ってずっと言っていて、メディアには基本的に出なかったんですよ。
川上さんが、ジブリの見習いを始めたころから、ジブリの鈴木敏夫さんに「メディアに出たほうがいいぞ」って言われて、メディアに出るようになったんですよ。

川上さんって、サービス精神は旺盛なんですけども、他人の理解度に合わせることは、あまり得意ではないんですよ。堀江さんもそうなんだけど、「相手は、これくらいわかっていて当然だよね」っていう前提の話で、ものを進めて喋っちゃうんですよ。

川上さん、友達はいるよ。ぼくは、友達だと思ってるよ。かみ砕き能力を必要としない……ミッションとして与えられたらやると思うんだけど。
駿さんも駿さんで、言っていることは、ぼくはわかるんですよ。論点がずれていると思っていて。

言葉づかいの問題

西村:
川上さんが見せた映像に関して、川上さんが「こういう気持ち悪い映像ができたんですよ」。で、「人間が思いもしない、気持ち悪い動きが作れると思うんです」って言って説明をしたんです。
それに対して、宮崎駿さんが障がい者の友だちの話をしました。その障がい者の人が、筋ジストロフィーかな?
あれで、障がい者を思い出すとか、あり得ないっていう、宮崎駿さんバッシングの人もいるんですけど、ぼくはそれを間違っていると思っていて。与えられた筋肉の状態で、最善の移動をしようとした場合は、痙攣した人の動きと似たものになるんです。

不随運動をする障がい者の人っていうのがいて。不随運動って、自分が思っているのと関係なく動いちゃう人なんですよ。だから、細かい動きができなくて、わりと大きい動きを使わざるを得ないっていう。全身を使って、大きい動きをするほうが、安定して動けるんですよ。だから、筋ジストロフィー障がいとかある人が、横になって這ったときの動きというのと、川上さんがプレゼンした動きっていうのは、実は似ているんです。ここは、ぼくの解釈だと思ってください。

それを川上さんは、「気持ちの悪い動き」という表現で説明をしました。でも、宮崎駿さんは、生きものとして限界があるなかで、いちばん効率の良い動きをしたら、あの動きになるよねっていうことを、宮崎さんは知っていたんです。
だから、生きものとして、与えられた条件のなかで最善の動きをした、彼の動きっていうのと、AIが出した答えは一緒だったんです。
でも、川上さんは、それを「気持ちが悪い」という表現をしたんです。ぼくは、そこが問題だと思ってるんです。ここ、わかる?

宮崎さんが、障がい者の話をしたのは、あれは同じ動きなんです。ああいう動き方をしちゃうんですよ。せざるを得ないんですよ。それをAIは、与えられた条件の中で、いちばん速く動かなければならない場合は、大きく動くし、腕とかじゃなくて、ヒジだけで全身を使って動くとかをやるんですよ。だから、合理的に、同じ達成点に達したものを……、人間とAIは同じところに達成するから面白いですよね、って話にするんだったら、ぼくは全然いけたと思うんです。

障がい者が、普通の人間と違う動きをすることを、宮崎さんは気にしていないと思うんですよ。同じ動きに到達するから、「AIって面白いでしょ?」って話にしたら、「へぇー」って話だと思うんです。そこを、「気持ちの悪い」って表現の枠で切り取っちゃった、川上さんの言葉づかいの問題だと思ってるんですよ。それを、ぼくは、川上さんが口ベタだからだと思ってるんです。

川上さんは、人を信じて託す人

西村:
川上さんって、説明するのが下手で、ぼくがあれを見たとき、川上さんは何も言ってないんだよね。最善化するとこうなるんだとか、重心取ろうとするとこうなるんだとか、面白いですねっていうので、AIが最善の行動を取ろうとすると、見たことがない生きもののような形になるっていう。要は、普通の走りにならなくて、こういう形が、計算としては最善の形なんだっていうので、「おもしれー」って話だったんです。

でも、川上さんは、喋らなきゃいけないと思って、言葉で説明しちゃった。で、その言葉が、ボキャブラリー少ないから、「面白い」と「気持ち悪い」しか出なかったんだと思うんだよね。悪気はないと思う。

川上さんが、サービス精神があるのが良くないっていうのが、あんなところにカメラがいるのもわかっていながら、そういう話をするな! って話なんですよ。ずっと、ジブリに出入りしている、NHKの人がいるんですよ。Aさんという。その人が、会議だったり、打ち合わせだったりも、けっこう撮影していて。だから、カメラが回っているのは、いつもの風景なんですよ。ただ、それを止めるべきなんですよ。
だけど、仲が良いし、そういう仕事をしているから、サービス精神として撮影させちゃったんです。公開されてる話じゃないから、言うべきかわからないんですけど、川上さんはそれを「使わないでください」って話も、Aさんにしたらしいんですよ。

結局、「やっぱり、いいです。使ってください」ってなったんですけど、それって川上さんのサービス精神なんですよ。ぶっちゃけ、サービス精神なんか、無いほうが良いんですよ。
仕事のことを考えるだけだったら、「カメラ入れねえ」って言うだけで、終わりの話なんですよ。でも、テレビ的に取れ高あるし、おいしいでしょ、使いたいでしょ、じゃあ使って良いですよ、叩かれるのオレだし、っていう川上さんのサービス精神の結果なんですよ。だから、この人、人前に出るの向いてないな、って思ったんですよね。いい人だから。

カメラ回ってるんだったら、正直に喋らないって手があるんですよ。だって、100%何を使われるかのコントロールはできないから。そうすると、カメラが回ってるんだったら、この程度しか喋らなくていいか。「じゃあ、カメラ終わったあとに打ち合わせします?」っていうふうに、ぼくだったらしたかもしれないです。

川上さんは、人を信じて託す人なので、人にも信じられるんですよ。だから、角川歴彦さんが、「川上さんだったら後継者にできる」って言ったわけじゃないですか。
だから、川上さんと関わった、NHKのAさんを信じて提供したんですよ。人を信じて、その人に良かれと思ってやるんです。いい人か、悪い人かで言うと、いい人なんですよ。ただ、経営者として、表に出るべきかっていうと、出ない方が良い人だと、ぼくは思ってます。

一人くらい川上さんのフォローに入るべきだった

西村:
映像ではわからないけど、誰もフォローに回らなかったんだよね。一人くらい、川上さんのフォローに回ればいいのにと思って。「実験中なんです」っていう、よくわからない言い訳したけど、川上さんは言い訳できるキャラじゃないんだよ。言葉が下手だから。
「生命の冒瀆」って話で、要は最速行動をとった場合に、宮崎さんが生命だと誤解できるくらいの表現が、コンピュータで作れるようになりました。じゃあ、これを気持ち良い表現で、かわいいものを動かすには、どうすれば良いかっていう、人間が思いもつかなかったことが出来るかもしれませんよね、っていう話に切り替えるべきで。それは、川上さんがやる仕事じゃないんですよ。なぜなら、「気持ち悪い」って言っちゃったから、黙ってたほうが良いんです。

っていうのを、誰かがやるべきだと思うんですよね、あの場で。それをしやすいように、鈴木敏夫さんは、「これをどこに持っていきたいの?」っていう助け舟を出したんですよ。

宮崎さんが怒りました、川上さんも言葉が詰まりました。鈴木さんは、なんとかしなきゃと思って、どこどこに持っていきたいので、気持ち悪いものを目的としているんじゃないんです、と。人間が想像していないけど、人間が感情を動かし得る動き、っていうのを作るのが目的なんです、っていうのを別の人が説明に入れば良かったと思うんですよ。だから、しいて言えば、それをやらなかった清水さんが悪いってことかな(笑)。

ぼくは、鈴木さんの助け舟だと思いますよ。何か議論で白熱して、人が感情的になっているときに、視点をずらすっていうのは、けっこう重要で。例えば、「キノコが好きです」って人と、「タケノコが好きです」って人が、味について言っているときに、「でも、パッケージは、緑が多いのはどっちでしたっけ?」って話をすると、一回視点が収まるんですよ。
5秒以上黙って、感情が持続できる人間って少ないんですよ。怒ってる人って、かならず5秒以内に言葉を繋げるんですよ。能力のない人はべつなんだけど。
バーッと喋って、相手が何かを言っても、すぐかぶせてとか。基本、5秒以内にかならず喋るんですよ。そこで、どうやって時間を止めるかっていうのは、けっこう重要なんですよ。

口論している間に、相手が言い続けてるのを我慢していても、それはリセットにならないんですよ。別の視点で、別の考えを5秒させるだけでいいんです。
「CGで、こういうの作りました」ってところで、川上さんもゴールの話はしないと。宮崎さんも、気持ち悪いけど、会社でカネを使ってやっているんだし、何かゴールはあるんだろうと思う。ゴールって何なのっていったときに、誰かが全然関係ないところから、とりあえず5分以上喋ったら、けっこうスッキリするんですよ。

これは、実はサーバをカリフォルニアで用意したんですけど、1台10万円くらいするみたいな、前提の説明っていう、よくわからないことから話をすると、宮崎さん的には話に飽きるじゃないですか。それで感情が収まるんですよ。
そこから、ゴールって話に持っていけば、すんなりいくっていう。人付き合いのテクニックです。

重要ですよ、人の感情を逆なでしないって。


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1 Comment

  1. とても興味深い記事です
    感心しました
    西村さんは人の感情の仕組みをよく理解していますね
    その分析力の高さが羨ましいです
    逆撫でしないことが得意なぶん、きっとあえて逆撫ですることもお得意なんでしょうね…

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