Aさんの庭東京の阿佐ヶ谷に、宮崎駿監督がデザインした公園があります。
宮崎監督の著書『トトロの住む家』で紹介された古民家の庭園が、そのまま公園になっています。
その場所は、ほんとうは失われてしまうところでしたが、本に掲載されたことが縁となって、「Aさんの庭」として残ることになりました。



その家は、1924年(大正13年)に、東京市震災復興局で都市計画に携わっていた近藤謙三郎氏の設計によって建てられました。
外観は、赤い素焼きの瓦屋根で洋風住宅でしたが、内部には和室もある、当時の住宅の移り変わりを知る上でも、とても貴重なものでした。

宮崎監督は、その旧邸宅を「たからもの……、そう表現するのが一番ふさわしい」と著書の中で語っています。以来、近隣の人たちからは、「トトロの家」として親しまれてきました。
しかし、2007年にその土地を借りていた住民の方が、地主に返還したことで、トトロの家と緑ゆたかな庭園は、存続の危機となります。そこで近隣の人たちが著名に立ち上がり、その年の末までに6万3千人分を集め、区役所に提出。家と庭の保存を求めました。

Aさんの庭

これを受けて区は、地主から公園用地として買い取ることに決定し、2010年の開園を目指して、区指定の重要建造物に指定する予定でした。ところが、その矢先、2009年2月14日に不審火によって、トトロの家は全焼してしまいます。

その出来事に、立ち上がったのが宮崎駿監督でした。監督は、何度が現地に足を運び、家の土台や井戸、庭などを残し、家を思い出させる赤瓦のトイレを新設するなど、公園のプランを区に提案します。それが全面的に受け入れられ、2010年7月25日に、「Aさんの庭」として開園にこぎつけました。

宮崎監督は、そのときのことを「トトロの住む家 増補改訂版」でこのように語っています。

「懐かしい家」の思い出を風景として継承する

Aさんの庭

宮崎:
Kさんの家が不審火で全焼してしてしまったでしょう。あの家を大事に思っていた人たちの気持ちを考えると、「これはとても放っておけない」と。家が燃えちゃったんだから、公園化そのものが見送られるかもしれませんから。それで、ぼくなりの公園のアイデアをイメージボードに描いて杉並区にお見せしたんです。そんなこともあって「Aさんの庭」が開園した。女房には「これがお父さんのやった一番いい仕事ね」と言われましたよ(笑)。

この「Aさんの庭」という公園の名前も、宮崎監督による命名です。Aさんとは、ここを訪れるすべての人のことを意味します。みんなが、自分の庭のように、ここを大事にしてほしいという思いが込められています。

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