火垂るの墓 野坂昭如『火垂るの墓』の原作者で知られる、野坂昭如さんが心不全のため亡くなりました。85歳でした。
『火垂るの墓』は高畑勲監督によって、1988年に映画化。このとき野坂さんは、「ちょっと冒険するような感じで」監督にお任せすることにしたと言います。



戦争当時の風景や、飢えた子どもの表情などを、アニメーションで表現できるものなのか疑問があったという野坂さん。

しかし、スタッフが描いたイメージボードを見て驚愕。「葉末の一つ一つに、螢の群がっていた、せせらぎをおおいつくす草むらの姿が、奇跡の如く、えがかれている、ぼくの舌ったらずな説明を、描き手、監督の想像力が正しく補って、ただ呆然とするばかりであった。アニメ恐るべし」とコメントを残しています。
映画『火垂るの墓』は、原作者にも納得のいく作品になりました。

野坂さんが伝えたかった思いは、映画が繰り返しテレビ放映されることにより、幅広い世代に浸透しているはずです。

高畑勲監督は、死を悼みつつ、感謝の言葉を発表しました。
「きっと今、久々に肉体から解き放たれて楽天的になり、日本国中を、沖縄を、自由に羽ばたきながら飛び回り、日本を戦争の道へ引きずり込ませまいと頑張っている人々を、大声で歌って踊って、力強く励ましてくれているに違いない。弱者の悲劇を描ききった不朽の名作『火垂るの墓』をアニメ映画化できて、私たちは本当に良かったと心から感謝しています」