川上量生2014年10月に渋谷のユーロスペースで行われた「スウェーデン映画祭2014」で、「子どものためのスウェーデン映画」のシンポジウムに登壇したKADOKAWA・DWANGO会長の川上量生さん。9月に子どもが生まれたばかりだという川上会長に、ジブリ作品との出会い、子どものためのいいアニメ作品とは何か? また、川上会長がプロデューサーを務めたアニメーション作品「山賊の娘ローニャ」の魅力について聞いた。



ジブリ作品は、「子どもが観たい」と「親が観せたい」を両立している稀有な作品

――シンポジウムでは「子どものためのスウェーデン映画」というテーマでお話をされていましたが、子どもにとっていい作品とは、どんなものとお考えですか?

川上:
僕の考えとしては、あまり現実離れしていない作品のほうがいいと思います。それは設定などの話ではなく、「悪はかならず滅ぶ」といった一面的なテーマではないほうがいい、ということです。子どもがそれを信じてしまっても、現実の社会は違います。だからといって、「人をだまして自分が得をする生き方をしよう」なんていうことを教えるのもよくないですよね(笑)。人生にはいい部分も悪い部分も両方ある。そのバランスの中でどうやって生きていくのか、ということを正直に伝えられる作品が、いい作品だと思います。

――子どもが好む作品と、親が観せたい作品というのにはギャップがあるものだと思いますか?

川上:
それは当然ありますよね。子どもにウケようと、ある意味子どもに媚びているような作品は堕落していきます。一方で、スタジオジブリの作品が証明していることですが、子どもは本当にいい作品を観るとその良さがわかるんです。だからつくり手は、それを信じていい作品をつくり続けることが大事だと思います。ジブリ作品は、「子どもが観たい」と「親が観せたい」を両立している稀有な作品なんじゃないでしょうか。

――ジブリ作品はなぜそれを両立できるんでしょうか。
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