細田守スタジオ地図の『未来のミライ』が、第91回アカデミー賞長編アニメーション映画賞にノミネートされており、惜しくも受賞を逃しましたが、細田守監督と齋藤優一郎プロデューサーが、アメリカのロサンゼンスにて、同賞授賞式終了直後に市内のホテルで会見を行ないました。
高畑勲監督追悼に万感の思いを馳せています。



1月頭のゴールデン・グローブ賞からアニー賞、アカデミー賞と約2か月間、アメリカでの大きな賞を経験し、細田監督は、オスカーには他の賞にはない特別なものがあったとふり返っています。「ノミネートされた人たちが一緒にランチをして讃え合う会(ノミニー・ランチョン)があったり、短編、長編アニメの(候補者たちの)食事会があったり、シンポジウムがあったり。ノミニーたちが交流し、それが次の作品に生かせるような場を準備してくれているんです。アカデミー賞には勝敗以上に大事なことを発展させてくれるものがたくさんあって、認識を新たにしました」

「CGアニメ大国のアメリカで、日本でも手描きのアニメーションが作りづらくなっている、担い手がいなくて困っているという話を率直に語ったんです。手描きの美術は、宮崎(駿)さんの新作で終わるのではないかと言われています。そして、まだ手描きでやれる作品があると思うという話をシンポジウムでしたら、拍手をいただきました。CGじゃなく、何か失ったものを取り戻すべきじゃないか、といった共感の拍手をいただいたような気がしました。日本にはまだ手で描くアニメの文化、伝統、人材がちゃんとありますし、世界で求められている自分たちの役割を強く感じました」

その年に亡くなった映画人たちを追悼するメモリアルのコーナーでは、スタジオジブリの高畑勲さん、黒澤明作品の脚本家として知られる脚本家の橋本忍さんが取り上げられており、子供時代に高畑作品を観ていたという細田監督は、その瞬間に感慨深げに思いを巡らせました。

「非常にジーンとしましたね。と言うのは、この作品のお披露目がカンヌ映画祭だったんですけど(フランスの現地時間2018年5月16日)、その日は三鷹の森ジブリ美術館での高畑監督のお別れの会の日だったんです。ジブリにいたときに何度かアドバイスをいただいた経緯もあって、是非お伺いしたかったですが、カンヌ映画祭があって行けませんでした。その時の上映で、『高畑監督が亡くなったことをどう思うか?』という質問があり、高畑監督がずっと日本のアニメの歴史で積み上げてきたものを、誰かが引き継いでいかないといけないと思いました。高畑監督がやられてきたような日常を大切にした映画を、誰かが継いでいかないといけないんです。それが僕だと言うのはおこがましいですが、亡くなった時にカンヌの舞台に立っていたり、アカデミーの授賞式の中で高畑監督の名前を見てしまうと、何か自分に託されている役目のようなものを感じないわけにはいきませんでした。こういう話をすると、ちょっとウルッときてしまいますが」

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