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今年の夏休み映画の中でも大きな話題を集めているスタジオジブリ最新作『コクリコ坂から』。1963年の横浜を舞台に、女子高生の海(うみ)が、先輩の俊へ抱く淡い恋心や、学生たちによる古い建物の存続運動などを経験する、ちょっぴり切なくて、あらゆる世代の心を温かくするストーリーだ。宮崎駿の長男で、『ゲド戦記』以来のメガホンを取った宮崎吾朗監督と、海の声を担当した長澤まさみが、作品への思いを熱く語り合った。


(取材・文:斉藤博昭 写真:高野広美)



ラインナップを見た翌日に、偶然、出演の依頼が!

――そもそも長澤さんが海の声を演じるというのは、監督の提案だったのですか?

宮崎:
実は僕、テレビや映画のお芝居をあまり観ないので、キャストを決める段階にはあまりかかわらないんですよ。鈴木(敏夫)プロデューサーから「この人でどう?」という打診を受けて、ピンときたらゴーサインを出す感じで、今回はスケジュールとしてギリギリの状況で長澤さんに決まりましたね。

長澤:
わたしは、来年の映画のラインナップを眺めていて、「あぁ、ジブリは『コクリコ坂から』って映画をやるんだ」と思っていたら、翌日にマネージャーから今回のお話があったんです。こんな偶然があるんだと驚きましたね。わたし、普通にジブリ映画のファンで、『コクリコ坂から』も「いつ観に行こうかな」っていうレベルだったので、本当にびっくりしちゃったんです。

――確か長澤さんは、ジブリ作品で声の仕事を経験されていますよね?

長澤:
去年、「ニノ国 漆黒の魔導士」というゲームソフトで声をやらせてもらって、「ジブリの仕事ができた」と、自分の中で満足していたんです。わたしって、好きな作品に自分が出たいという欲があまりないタイプなんで、今回の話は、タナボタ的な感じでうれしかったですね。

宮崎:
すみません。実は「ニノ国 漆黒の魔導士」で長澤さんが声をやったことを僕は知らなかったんです。自分の会社なのに……(笑)。僕の長澤さんのイメージって、“セカチュー”(映画『世界の中心で、愛をさけぶ』)とかカルピスのCMしかなくて。

長澤:
監督って、本当にテレビ観ないんですね(笑)。

 

明るく作り過ぎた声を、演出で“無愛想に”抑えた!?

――そんな長澤さんに、監督としてはどんな演出をしたのでしょう?

宮崎:
まずお任せでやってもらいました。最初は、アニメーションの主人公の女の子ということで、明るいイメージで作っていきました。

長澤:
そうなんです。取りあえず明るく張り切った感じで演じ始めました。そうしたら監督から「その声だと、こびているみたいで裏がありそうだね」ってダメ出しされて……。でもそこでズバリと言い当てられたから、納得できたんです。

宮崎:
そうそう、最初は作り過ぎていたんです。

長澤:
でも、作らない感じでいいと思った瞬間、逆に楽になれました。普段のわたしは基本的にベラベラしゃべらないし、割とテンションが低くて「つまらなそうだね」と言われるタイプ。だから監督に「無愛想で」と指示されて、自分らしく演じられると思ってうれしくなったんです。

宮崎:1回、トーンが決まってからは、すんなり任せられましたよ。ときどき“無愛想さ”が減ったら注意するくらい。

長澤:
たまに忘れちゃいましたね。

宮崎:
俊とのシーンでは、つい楽しくなってトーンが上がっちゃうんですよ。2人の共演シーンは実際に長澤さんと岡田(准一)くんと一緒に録(と)ったので。

長澤:
わたしとのシーンが終わった後、岡田さんが一度、やり直しで居残りしたことがあったんです。わたしは、岡田さんのやり直した後の声を完成作で観たのですが、すごく良くなっていて、「わたしもあのとき残ればよかった!」って後悔しました(笑)。

宮崎:
やっぱり長澤さんと一緒にやることで、彼も考えたんでしょう。だから今回、本当に長澤さんに演じてもらって感謝していますよ。

長澤:
監督、それ本心ですか?

宮崎:
もちろん! 海がどんな女の子なのかが伝えられたし、手探りだった部分も、あるべき場所に落ち着いたと満足できましたから。

 

映画の舞台1963年と現代の大きな違いの一つは「会話」

――この作品は1963年が舞台です。お二人はそれぞれ、時代背景や作品についてどんな思いがありますか?

宮崎:
1963年をストレートに映像で描いているわけじゃなく、それでいて1963年らしさをどう出すかで苦心しました。会話でも、間が入らずポンポン飛び交うのが当時の感じなんですよ。そういうことに気付いてから、時代の雰囲気に歩み寄れましたね。

長澤:
確かに、今のわたしたちって、会話をしても、「あ、はい」で終わったりしてキャッチボールにならないことが多いですよね。監督から、この時代は「好き」という一言は、「結婚してください」くらいの重みがあったと教えられて、言葉に対する強い思いが、この時代の人にはあったんだなと思いました。わたしは完全に「好きかも」って濁らせる世代ですから(笑)。

宮崎:
僕ら1980年代に青春を過ごした世代は「付き合ってください」と告白するんですよね。あるテレビ番組で、年代によって告白の仕方が違うというアンケートをやっていて、映画を作る上での参考になりました。

 

『耳をすませば』のラストとシンクロした『コクリコ坂から』

――ところで、長澤さんに過去のジブリ作品の中でも特に好きな作品を伺いたいのですが。

長澤:
わたしが好きなジブリ作品ベスト3は、『風の谷のナウシカ』『魔女の宅急便』『耳をすませば』です。その中でも1番は『耳をすませば』なんですが、『コクリコ坂から』の告白シーンを脚本で読んだとき、『耳をすませば』で聖司が「雫(しずく)、大好きだ!」っていうシーンを思い出して、「『コクリコ坂から』、超好き!」ってもうすでに好きな作品になっていました。

宮崎:
じゃあベスト4ということで『コクリコ坂から』も加えてください(笑)。

長澤:
もちろんです!

――ちなみに監督が好きなジブリ作品で、長澤さんに薦めたいものは?

宮崎:
僕がアニメーションを夢中で観ていたのって、 “ジブリ以前”なんです。スタジオジブリとして作品が出るようになったとき、僕は大学生になっていましたから。そういう意味で、好きな作品となると『パンダ・コパンダ』や『ルパン三世 カリオストロの城』ですね。長澤さんは知らないかな?

長澤:
“カリオストロの城”も、『パンダ・コパンダ』も観ています。でも、これからのスタジオジブリは、監督が担っていってくれるんだと思っていますよ。

宮崎:
光栄ですが、責任重大ですね(笑)。

宮崎吾朗監督&長澤まさみ 単独インタビュー
http://www.cinematoday.jp/page/A0002989


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