『もののけ姫』と『猫の恩返し』のブルーレイが本日発売となります。
価格はいずれも7,140円で、『猫の恩返し』には、同時上映された『ギブリーズ episode 2』も収録されます。
いずれも日本語音声はDTS-HD マスターオーディオでの5.1chと、リニアPCMでの2.0chステレオを収録。ドルビーデジタル5.1chでの英語、フランス語、ドイツ語、韓国語なども収録されます。



もののけ姫

絵コンテを本編映像とのPinP(子画面表示)で収録。
映像特典として、北米公開に合わせてトロント、ロサンゼルス、ニューヨークの3都市をキャンペーンで回った宮崎駿監督に密着したドキュメント映像「もののけ姫 in USA」が収録されます。
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『もののけ姫』と『猫の恩返し』のブルーレイ化にあたり、鈴木敏夫プロデューサーが、「時代の転換点」と「宮崎駿と付き合う法」と題した文章を書いています。

時代の転換点

自分のためじゃなく誰かのために戦う。子どものころから、主人公はそういうものだと思っていた。ナウシカは風の谷の500人のために戦った。だから、納得がいった。観客として、主人公に共感するのは、その一点だった。

しかし、「もののけ姫」の主人公、アシタカは違う。アシタカは、誰かのためじゃなく、自分のために戦った。腕に痣の出来たアシタカは、体良く村を追い出される。痣は村人たちにとって忌まわしいものだった。

その旅立ちの音楽は、当然、アシタカの複雑な心境を表現しなければいけない。宮さんは久石譲さんに、そう依頼した。悩んだ。それでいいのだろうか。たとえそうだったとしても、ぼくは、主人公の旅立ちはいつだって、勇壮さが必要だと思った。

ぼくの悩みを打ち明けると、久石さんは、だったら、二曲作ってみると言ってくれた。そして、ふたつの曲が出来あがった。いずれ劣らぬ名曲だった。さて、どっちがいいだろうか。どちらにするか決めるとき、久石譲さんがぼくに目で合図を送った。宮さんは、迷うことなく勇壮さを選んだ。

この時期を境に、その後のヒーローたちは、自分のための戦いを繰り広げている。いま振り返ると分かることがある。「もののけ姫」のころに、大きな時代の転換点があったのだと。

スタジオジブリ 鈴木敏夫

 

猫の恩返し/ギブリーズ episode 2

2002年に2本立てで劇場公開された「猫の恩返し」(森田宏幸監督)と「ギブリーズ episode 2」(百瀬義行監督)を収録。
特典は、本編映像とのPinP(子画面表示)で収録した絵コンテのほか、アフレコ台本、「猫の恩返し」誕生物語(約34分)、予告編集を収める。
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宮崎駿と付き合う法

若い人で映画を作る。これは、ジブリにとって大きな課題だった。第一に、宮崎駿の作ったものと比較される。これは、若い人にとっては塗炭の苦しみとなる。第二に、近くに宮崎駿がいる。これは、経験したもので無ければ分からない大きなプレッシャーだ。随分と昔の話だが、ある企画で若い監督を抜擢したが、わずか2週間足らずで彼は十二指腸潰瘍になって入院した。

「猫の恩返し」は、「千と千尋の神隠し」の次回作だった。あの超大ヒット作のあとを誰に任せるのか? 悩みに悩んで、抜擢したのが森田宏幸君だった。

彼の特徴は、だれにも真似のできない粘りがあること。アニメーターとして、粘った絵と動きには定評があった。そんな彼の目標が演出であることをぼくは知っていた。

彼が「猫の恩返し」に取り掛かると、宮さんが森田くんの机の横に張り付いた。不安が過った。森田くんが監督業を放り出す危険性がある。それどころか、逃げ出すかもしれない。

宮さんは、思いつくことを言葉にし、また、絵を描いて見せる。しかも、それらは尋常なスピードじゃない。そこで、大概の人はついて行けなくなって逃げて行く。

しかし、森田くんは違った。それどころか、疑問が生まれると、宮さんを探して捕まえて、延々と質問をする。自分がトコトン納得するまで。

最初のうちこそ、宮さんも丁寧に答えていたが、回数が増えるにつれ、宮さんの方が辟易として来た。逃げ出したのは宮さんのほうだった。

森田くんは、終始、マイペースで「猫の恩返し」を作り上げた。

スタジオジブリ 鈴木敏夫